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田舎暮らしに選択肢を加えたら、女性や子どもの可能性は広がっていく

植田敦代

一般社団法人SUMICA副代表理事/ NPO法人wiz理事
岩手 住田

しんどい時はその状況を認める。セルフケアが大切


 ─── 同じように子育てしながら働く身なので心強いです。頑張りすぎて「大変!」ってなっちゃう時なんかはないですか?

私は、大変だなって感じる時は、素直にその状況をしっかり認めるようにしています。「辛い」とか「大変だ」とか。自分に向き合うことが大事って、よく聞くじゃないですか。でも、私はずっとセルフケアを軽視して、なんとかなるだろうとやってきたんですね。

考えが変わったのは、NPO法人ウィメンズアイが主催する地域活動をする女性向けの研修「グラスルーツ・アカデミー」でシアトルに行った時ですね。日本との時差もあって、知人と連絡を取ることもしづらくなって、自分に向き合わざるを得なくなったのですが。そういう時間が意外と大事だし、スッキリするなと思えたんです。

当時は、毎日こんなに忙しくて嫌だなと思っている時期だったから、ちょうどいいタイミングで気がつくことができましたね。しんどいって認めて、時間をとって自分のことを考えていいんですよね。

Photo by Chip Rountree


─── 「人のために」も大切ですが、やっぱり自分のケアも大切ですね。

まちや世田米駅では副代表という立場ではありますが、私が「しんどいですよね」って率先して言えば、スタッフや関わるみんなも言いやすくなるかな、と思います。グチはあまり好きじゃないけど、少しならそういう時間も必要かな。みんなが思いを吐き出しているうちに、整理されてモヤモヤがスッキリして、次の一手が見えてくると思うんですよね。

─── 「子どものため」と頑張るママもリフレッシュできるような楽しい企画を期待しちゃいます。

ですよね。でもまだ今は、自分が親子学級などに参加する側で、これから自分の企画にどんな風に生かせるか学ばせてもらっているところですね。

今まで、まちや世田米駅で開催される産後ケアなどの場は見ていたんですが、出産前は本当に必要なのかが、分からなかったんです。でも、自分が出産してから、親子ヨガとか、女性の体のケアをする場所が、確かに必要だなって気が付きました。

─── 大きな価値観の変化はないけれど、自分の経験を通してお母さんたちのニーズに気づけたんですね。

そうですね。まちや世田米駅のイベントに絡めて、整体とか、ネイルとか、前髪カットとか、「ちょっと自分をケアをしたい!」が叶うコンテンツがあれば、リフレッシュできますよね。その間、子ども達は適当に遊んでいればいい。そういうのがないとお母さんたちはリフレッシュできないよね、と思います。

─── 楽しそうです! 住田でこれからどんなことをしていきたいですか?
 
「自然も多いし、子育てには良さそう」って、みんな言うじゃないですか。でも、田舎はどうしても、関わる人の少なさもあって、視野が狭くなりがちで。女性に限らず、職業や進学や部活動の選択肢がないこともありますよね……。そんな理由で、住む場所として選んでもらえないのはもったいないと思っています。せっかく、住田町は自然にも人にも恵まれた環境なんだから。

だから、とにかく選択肢を増やしたいです。まずは、知っているモノやコトの数を増やすことからでもできたらいいなと思いますね。在宅でできる仕事の話や、様々な学びの場をまちや世田米駅で開催してみたいです。ひと部屋でお母さん達が話したり講習を受けたりして、子どもは別の部屋で預かるとか。できることからやっていければいいかな。

話したり、学んだりする場を通して、「◯◯ちゃんママ」じゃなくて、名前で呼びあえたらいいよなって思います。子育て以外のところでも女性がふっと立ち止まった時に、みんな、どう思っているんだろうなって話せるような。息子が生まれてから、なおさら感じます。オンラインが普通になってきているし、田舎であってもできることの可能性は増やしていきたいですね。

─── もう10年近く住田に住んで、住田に受け入れられた敦代さんが、今は受け入れる側ですね。外から来る女性が暮らしやすい地域に何が大事だと思いますか?

おかげさまで、私自身、子育てしながら楽しく暮らせていると思います。地域の人たちのありがたいサポートもあるので。歩いているだけで、食べきれないほどの野菜をいただいたりとか(笑)。

新しい土地に暮らすってハードルが高いじゃないですか。でも、協力隊にしてもお嫁さんにしても、どんな形であれ何かしらの想いを持って来ているはずなんですよね。みんな表立って言わないだけだと思います。地域の方たちには、「協力隊でお金がいいから来たんだろう」とか、「嫁になったんだから来て当たり前だ」という捉え方にならないでほしいなと思います。

その一人一人に物語やかなりの決意があるはずなんです。だから、理解して寄り添ってほしい。将来的に住田を離れることになったとしても、地域の人に理解してもらえなかったって思って帰っちゃうのは一番もったいない。

もし住田を離れても、住田には自分を分かってくれる人がいるからこれからもつながっていこうと思ってもらえるのがいいなと思いますね。来た人も自分のことを分かってもらう努力はしなきゃいけないだろうし、地域の人も本当の意味でその人のことを知ってほしいし、知る努力をしてほしいなって思っています。

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植田敦代
岩手県盛岡市生まれ、花巻市育ち。大学卒業後、リクルートエージェント(現:リクルートキャリア)で4年半法人営業をする。東日本大震災後、「岩手のために何かしたい」と、いわて復興応援隊(復興支援員)として住田町に着任。住田町観光協会、まちの活性化を目的とした集落支援員、地域おこし協力隊として活動した。2014年から岩手の若手ネットワークであるNPO法人wizの立ち上げに参加し理事に、2015年からは「スミタをツナグ」をテーマに活動する一般社団法人SUMICAに所属。「まちや世田米駅」を拠点に、住田のまちづくりに取り組む。

住民交流拠点施設 まちや世田米駅Facebook https://www.facebook.com/machiyasetamaieki
NPO法人wiz https://npowiz.org/

インタビュー日 2021年7月16日
取材・文・写真 板林恵

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