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あれから10年、「仲間と一緒にやりたい」と思うわたしがいる

佐藤美代子

助産師/まんまるママいわて代表理事
岩手・花巻

板林恵

あ、私、子どもを産んだのにロスにいる

─── それは、しんどい。そういうときはどうしたんですか?
やっぱり岩手を離れる、とか(笑)。ウィメンズアイ のグラスルーツ・アカデミー東北には助けられました。分かり合える人たちと出会えて、ずっと喋っていました。アカデミーの参加者たちは仲間だと感じます、みんなそれぞれリーダー的に活動しているから活動を率いる辛さもわかるし。このままここにいると自信をなくすっていう時に外に出て、お互い励ましあって。1回じゃなく、何度もそうやって出たり入ったりできました。

─── 美代子さんは、グラスルーツ・アカデミーには2015年2月の初回から参加したんですよね。2018年には、アカデミーのロサンゼルス研修にも行った。
そう。ロサンゼルス研修は、私にとってはものすごく大きい出来事でした。「あ、私、子どもを産んだのにロスにいる」っていうことが、まず、人生の大冒険。1週間以上家をあけて学びにいくなんてありえない。夫も、「母親で外国行くやつなんかいない」なんて言ってましたし。学ぶことは子どもや学生の特権で、大人、特にお母さんは学んじゃいけないと私自身も思い込んでいたんですよね。その枠を外れたとき、あ、私これからまだ何でもできる、って芯から思えました。

写真:NPO法人ウィメンズアイ

─── そこは、どうして枠を踏み越えることができたんですか?
その前年の2017年のアカデミーのシアトル研修に、「あれ、仲間のお母さんが行ってるなー!」と思って。子どもいるよなあ、でも、平気で行ってるなあ。お母さんが行ってもいいんだなあ、と。それで、せめて子どもが小学校に上がったら、もしかして私も行けるんじゃないかと思って見ていました。家族は私の性格を知ってるからか、最終的には「どうせやるんでしょ」「決めたんでしょ」という感じ。

─── 仲間が、身近なロールモデルになったんですね。
この経験から、可能性、いろんな可能性があり得るんだと。誰にも許可がいらないって、感じることができました。いろんなところに仲間がいるって大事、お互いがロールモデルにもなる。以前は狭い医療の世界しか知らなかったけれど、NPOの世界に関わって、違う分野だけれど仲間だという人が広がりました。

─── 10年間の変化は大きかったんですね。
予測もしなかった人生を歩んでいます。震災がなかったら、一匹狼のままで、助産院の仕事にしても「人を雇う」みたいな考え方しか持てなかったと思います。こんなに多くの人と出会って、「仲間」という感覚を持てたことがすごい。まんまるのメンバーも一緒に働く仲間で、わたしが前に出がちなデコボコ組織だけど、信頼しあえる。常に「仲間と一緒にやりたい」と思うわたしがいることが一番の変化かなと思います。

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佐藤美代子
1978年生まれ。岩手県盛岡市出身、岩手県花巻市在住。
助産師。2011年から助産師とママをつなげる産後ケア・産前産後サポート事業を開始。
現在3市から委託を受け、活動中。

●まんまるママいわて:https://manmaru.org/
●コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン:http://communityorganizing.jp

インタビュー日 2020年10月12日
ライター 塩本美紀
写真 下平桃子 古里裕美 NPO法人ウィメンズアイ

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