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南三陸に育てられた分、私らしくできることを「まちづくり」につなげたい

大場黎亜

株式会社Plot-d 代表取締役/プロットデザイナー
(一社)東北GYROs 代表理事
宮城 南三陸

コロナ禍をきっかけに見つけた新しい夢

─── 楽しみながらも、努力して町に馴染もうとしている様子が伝わってきます。

ただ……ここ数年、しばらくちょっと落ち込んでいた時もあったんです。全国に呼ばれて行ってきたまちづくり関係の仕事が、コロナ禍で軒並みダメになってしまって。今まで外に向かってやらせていただいていた仕事が全部なくなったんです。それで、急に家にこもるようになってしまって、気持ちがとても沈んでいました。

─── そうだったんですね……。

そんな時助けてくれたのが、やっぱり町の人たちだったんです。畑はマスクしなくて良いからお手伝い半分、気晴らしに遊びにおいでよと誘ってくれたり、船で釣りに連れて行ってくれた人がいたり、町内開催の林業についての研修があると声をかけてくれたり。地域の人、特に一次産業に関わる人たちに救われたんですよね。畑を手伝ったり、森の研修を受けたりしていくうちにすごく元気になることができました。

─── 森の研修というのは?

自伐型林業といって、環境保全を行いながら持続的な森林経営をする林業のあり方を学びました。全国的にもそうですが、南三陸にもたくさんの放置林があるんです。これが増えると土砂災害が増えたり、獣が増えて畑が荒れたり、川が汚れて海の養殖産業にも悪影響があったりしてしまう。そこで、山守が減っている今の時代に、山守を増やそうということでこうした自伐型林業に関する研修が開かれているんですね。チェーンソーでの伐倒研修やバックホーの操作についても学びました。

林業なんて初めての経験で難しいことばかりだけれど、やってみると学びが多くて楽しくて。身近な山を手入れして、町を守っていこうという仲間たちと一緒に、思い切って2022年の3月に一般社団法人東北GYROsを立ち上げました。枯れ木や倒木の伐採をしながら、その薪などを活用して地域財産を生かしつつ、里山の景観を守り、防災にも役立てようと思っています。

写真:本人提供

─── わぁ、林業にも関わっていらっしゃるんですね! なんとパワフルな。

林業と言っても、これで収益を得ようというよりは、環境を整え、地域の財産をうまく回していこうという目的で規模は小さなものです。私はアイディアを出したけど、町の人たちがすぐ手伝ってくれたり、重機を貸してくださったり、周囲のお陰で実現できています。素人のような私たちに、大切な山を触らせてくれることが、本当にもう感謝でしかない。

ただボランティアでは、体力も資金も足りないので、薪を売ったり、薪割りイベントをしたり、運営費だけは稼ぎながら、マイペースでやっていこうというところです。森に入って、町のこともよく見えるようになったし、何より、私自身すごく元気になりました。

─── ボランティアで南三陸のお手伝いをされて、今度は町の人たちに支えられている。相互で助け合って、広がりが生まれているんですね。

実際はボランティア時代から、南三陸の人たちには助けられてばかりです。ボランティアを始めたばかりの頃から通っていた飲食店のお父さんは、いつも「おかえり」って言ってくれて、娘みたいに可愛がってくれました。

私は少し家庭が複雑だったこともあり、実家で両親と素直に会話ができなかった時期があったんですよね。でも、この町に来ると「南三陸のお父さんだぞ」って言ってくれる人がいたり「娘みたいなもん」と言ってくれるような人もいっぱいいて(笑)。彼らには私も素直に「ただいま」「ありがとう」って言える。ボランティアに通ううちに、「あれ、私自分の本当の家族とどうしてちゃんと話してないんだろう」って思いようになって、少しずつ家族にも心を開けるようになったんですよ。

─── それは素敵ですね。

震災から10年が過ぎて、いろんな人に支えられて私も少しだけお姉さんになれたかな(笑)。20代にがむしゃらにやってきたことは、結局全部、当初目指していた教育や人づくりと繋がっているんですよね。コロナがきて30代になって、これからはまた違う形で周囲と関わりながら、新しいことができるのかなと考えているところです。地域に根付きながらも、都会と行き来する働き方のロールモデルの一つになったり、近くで困っている人にこれまでの体験から何か助けになれるような、そんな人間でいたいなと思っています。私を育ててくれたこの町に、これからも恩返ししつつ、自分にできることを活かして、自分らしさをもっと大事に生きていきたいと思っています。

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大場黎亜
東京都出身。早稲田大学教育学部在籍中に、震災復興のボランティアとして南三陸へ通い始める。南三陸町災害ボランティアセンターでのリーダーとしての活躍が認められ、2014年最年少で南三陸町復興応援大使に任命される。早稲田大学大学院在学中から、まちづくりのコンサルタントとして全国規模で活躍、2019年株式会社Plot-dとして独立。2017年、南三陸町の男性と結婚。コロナ禍で偶然自伐型林業を学び、里山の風景を守りつつ町の防災にも役立てたいと、2022年3月一般社団法人「東北GYROs」を設立。防災教育や人づくり、まちづくりをテーマに活動を続ける。

インタビュー日 2022年9月29日
取材・文 玉居子泰子
写真 佐竹歩美

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