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子どもも大人も自然の中でのびのびできる居場所をつくり、守りたい

深澤鮎美

自然あそび広場にここ代表 保育士
岩手 釜石

地域おこし協力隊として、「自然保育」がテーマの個人事業主に

─── 「ローカルベンチャー」ってどんな制度だったんですか?

「ローカルベンチャー」の地域おこし協力隊は事業企画を町に提案して、個人事業主として自分のテーマで活動しながら事業を作るというものです。こすもす公園で子どもたちが豊かに育つ自然保育を行うというテーマで、2017年から3年間の地域おこし協力隊になることができました。

最初は施設のある保育園を作ろうと考えて、いろんな制度を聞きに行ったのですが……ことごとくうまく行きませんでした。小規模では定員や採算の面でどうしても難しく、一緒にやりたいと言ってくれた仲間も家庭の事情でダメになったりして。

それで、そうか、保育園を作るのは今じゃないんだって思ったんです。親子参加型であれば自分一人でもできる。まずは、自然保育の良さを大人たちに伝えようって思いました。協力隊は行政とも連携しやすく広くいろんな人に知ってもらえる強みがある。既存の子育て関連施設にもアピールしていけば、体験などを通じてエッセンスを入れられる可能性がある。

そう考えて、こすもす公園で週1回の定期的な親子参加型「森のようちえん」と、行政と一緒に年4回の森のようちえんを行うようになりました。

─── 参加するのはどんな人たちでしたか?

地元出身者より、外から来たママたちが多かったですね。釜石には転勤で来る人たちも多いんです。転勤の人たちは特に、知らない土地にぽっと来て、すでにママの輪ができている集団に入りづらいじゃないですか。誰かと繋がりたい、誰かと喋りたいっていう気持ちが強いけれど気を使っちゃう。野外だと、一人でもいやすくないですか? 始めてみたら、こすもす公園での親子型の森のようちえんって、そんなお母さんたちの居場所にもなるんだなあと思いました。

─── 大人にとってもよかったんですね。鮎美さんの「自然」や「野外」プログラムへの想いはどこから来ているんですか?

保育士養成の専門学校に通っていた時のキャンプ実習で、すごく世界観が変わったのを覚えています。当時は東京の学校に通い人混みの中に暮らしていたところで、「自然や人とともにあること」に出会った感じ。夢中になってキャンプのスタッフをやったり、全国に散らばってるキャンプのコミュニティを通じていろんな人と繋がっていきました。

キャンプでは、人とのコミュニケーションも開放的になれるし、自分らしくいられるあり方というか……自分ってこうなんだっていう発見ができるのも新鮮でした。なので、子どもたちも、野外で過ごすのはいいだろうなという想いがありました。その頃に「森のようちえん」みたいなものの存在も知って。

─── そんな経験があった上で、こすもす公園に出会ったんですね。

そうです。そして、フィルさんから自然との共生を大事にしているパーマカルチャーのことを聞いて、ちゃんとこの公園の仕組みやパーマカルチャーのことも知りたいと思いました。神奈川県の逗子にある「ごかんのもり」に毎月通って保育士向けのパーマカルチャー講座を受けたり、パーマカルチャー・デザインコースも受講しました。そうしたら、今まで自分が感じてやってきたことは間違っていないんだなと思えたんです。自分はこれでいいんだって思えたのはパーマカルチャーに出会えたおかげかもしれません。

─── コロナウイルスの流行が始まった2020年春が地域おこし協力隊の卒業と重なったと思うのですが、今はどうしているんですか?

親子型の森のようちえんを続けながら、釜石市の子育て支援センターで週2回スタッフをしていて「お散歩の日」を開催したり、フリーランスの保育士として子どもの預かりなどもしています。今年から釜石市のしごと・くらしサポートセンターができたんですが、釜石のママたちとの繋がりをたくさん持っているということでスタッフになり、講座を企画したりもしています。女性たちが集まってスキルアップしたり、自分の人生を豊かにしたりするお手伝いです。

一方で実は、こすもす公園はコロナ禍が始まって以来ずっと閉めていたんです。遊具の老朽化が進んで公園の維持管理が大変な上に、中心だった皆さんも年を重ねつつある。なので、私たちも一緒に続ける方法を考えるからと仲間と「こすもすReBornプロジェクト」を立ち上げて、もっとみんなの手でやっていこうよと、ボランティア募集のポスターを作ったりしているところです。

─── そうでしたか。震災から10年、こすもす公園も岐路に立っているんですね。

はい。私も本当は、こすもす公園で預かり型の自然保育ができたらと今も思っています。自然の中で遊び込むことを通じて、子どもの主体性を育んでいけると思っているんです。それに、子育て支援センターに行きづらいママたちも、こすもす公園に来てくれたらなって思います。やりたいことをお金に変えるのは難しい、だからと言って無償で働くのは大変。どこかの森のようちえんにスタッフとして入るという最終手段もありますが、まだ何か手があるのではないかと、好きになった釜石でもう少し頑張ってみようと思っています。

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深澤鮎美
1986年生まれ、茨城県石岡市出身、岩手県釜石市在住。埼玉での保育園勤務を経て釜石市に移住し、2017年〜2019年度の地域おこし協力隊に着任。現在は、「自然あそび広場にここ」の屋号でフリーランス保育士として、こすもす公園はじめ、釜石市内を中心に活動中。名前の「にここ」には、一人一人を大事にして、にこやかでいられる場を作りたいという気持ちを込めている。人といることが好き。何でもポジティブに考えられることが特技。

●自然あそび広場 にここ https://www.facebook.com/nicoco.2525.cosmos

インタビュー日 2021年5月19日
取材・文 塩本美紀
写真 松浦朋子

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