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移住して18年。変わらず、大好きなものが自分の手でできる喜び

伊勢崎まゆみ

風土農園
岩手 遠野

タネから芽が出るのが毎回楽しいの!

─── 遠野に来て18年、ここで感じる面白さや楽しさは変わりましたか?

案外変わってないかもしれない。タネから芽が出るのが毎回楽しいの! だって、若い頃は本当にチャランポランでモテたくてしょうがなかった自分が、こうやってタネをまいて、育てて、取れた野菜が食卓に並ぶって本当に凄いことだなーって毎回思います。知識と技術が全然追いついてないからもっとうまくやりたいな、美味しくできたらいいのになーっていつも思ってます。都会では洋服を作っていましたが、同じ「作る」でも全然違うんですよね。デザインして、パタンナーとパターンを作って、あとは工場にお願いして出来上がったら販売するっていう流れだったから。でもイメージした服が形になる経験ができたことは、今でも糧になっています。こっちに来てからは一から自分たちで作り出せる喜びがあって、過程を楽しめるから達成感が違うのかなと思います。

─── 18年いてもまだまだ飽きないですか?

伊勢さんは海外に行きたいって言ってるし、「まゆみちゃんももっといろんなところに行っていろんな文化を見たほうがいいよ」って言われるんですけど、私にとっては東京から遠野に来たことが人生の大きな変化だったんですよね。だから遠野で感じたいこと、全然足りないの! まだまだ! 例えば、こっちに来たばっかりの頃に地方で素敵に暮らしている人の本を読んで、秋にクルミ拾いっていいなーと思ってたけど、ずーっとクルミが見つけられなくて。山に行ってもなくて、実がついているのを見つけてもいつの間にか無くなってたりして。それが5〜6年して、落ちてきたクルミの実を土に埋めて周りの果実を腐らせてから硬い殻を取り出すっていうことを知ったんです。知ったときは「えー! めんどくさい!」って思ったんだけど、自分たちの土地にクルミの木がいっぱい生えてるからやってみたんです。土に埋めて、洗って、干して、割って、1年通してサラダやクルミ餅、子ども達のお菓子、と日々の食になる工程がもう楽しくて。買ったクルミで作るんじゃなくて、大好きなものが自分の手でできる喜び。小豆も今収穫時期なんですけど、大好きなおはぎを作るのが楽しくて。「わー!」なんですよ。毎回「わー!」って思う。出来上がって子どもたちと食べているときも「わー!」だし。単純なことなんですけど、18年経っても非日常なんですよね。

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伊勢崎まゆみ
1976年横浜市生まれ。19歳のとき、憧れのアパレルブランドに採用されたことをきっかけにファッションの道へ。26歳でデザイナーとして独立して代官山に自身の店を持つ。一緒に働いていた友人が遠野に婿入りしたことがきっかけで遠野を訪れ、そこでのちに夫となる伊勢崎克彦さん(通称伊勢さん)と出会う。2006年、29歳で結婚して遠野へ移住。「風土農園」として、農薬や肥料を使わない自然栽培でコメや大豆を栽培している。生産した原料を使って玄米餅や藁づとの納豆などの加工品も製造している。

風土農園 https://www.facebook.com/tonofuudo

インタビュー日:2022年10月7日
取材・写真・文 成影沙紀

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