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職場はまるで拡張家族。「こんな会社あるんだ」って若者が町に戻ってくれたら

安藤仁美

映像デザイン制作会社はなぶさ プロデューサー
宮城 南三陸

職種も、働き方も、若者に選択の例を作りたい

─── これから、お子さんたちが少しずつ大きくなって手を離れていくと思うけど、仁美さんの仕事に対する長期的なビジョンはどうですか? 

時間はできるでしょうね。今、仕事もどうしても100%では動けない、全力投球というよりは常に70〜80%ぐらいでできるラインを狙ってコントロールしてる。なので、本当はもっと勉強してプロデューサーとして力をつけたいって思うところはあります。

会社を働く場として豊かにしていきたいというか、社員は増やしていきたいんですよね。高校生とか大学生くらいのお子さんのいる町内の方から、「はなぶさのこと、うちの娘が、南三陸にこんな会社あったんだって言ってるのよ!」みたいな話を結構聞くことがあって。昔は都会でしかできないと思っていたデザインの仕事が、南三陸にもある。そう若い子たちに思ってもらえているということは、やっぱり大切にしていきたい。そういうことを目指して勉強してた子が戻ってきたいという時に、「あ、いいよ。じゃあ、うちにおいで」って言えるようにはなりたいから、このはなぶさっていう会社を守っていきたい。夢じゃないですけども、そういう意味ではもっともっと仕事を増やしたいなと思いますね。

─── そうか、だから仕事を増やせるような力のあるプロデューサーになりたいっていう。

そうですね。どうしても地域から若者が減っていくじゃないですか。それは残念だなと思うし、そこで育った若者が戻ってこられる場になれたらいいなってすごく思います。もっと自分の好きなことをしていいんだよっていうことを、はなぶさの会社を続けることによって伝えていきたいというか。

すごくカッコいい尖ったデザインをしようとしているわけではなくて、依頼してくれたクライアントの個性、本来の魅力がにじむような表現をしていきたいねってずっと言っていて。そこが際立つことによって、画一的に見えているような地方がもっと自由に彩り豊かになったらいいなと。

多分、今、私が子どもを育てながら仕事をしていることも含めて、働き方の形も豊かにできる。そういう選択の例を作りたいのかもしれないですね。

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安藤仁美
1988年生まれ、愛媛県西条市出身。2011年3月に大阪で大学を卒業し、4月から半年間、東日本大震災の被災者支援活動「つなプロ」に参加し、南三陸町でボランティアを行う。南三陸町との縁ができたことから、大学職員として、学生向けのスタディツアーの企画、運営の業務に従事。その後、南三陸町に移住し、一般社団法人南三陸研修センターの職員になるとともに、地域活動の担い手としてさまざまな委員や事務局を務める。2016年に結婚し長女を授かったのち、2020年に夫の立ち上げた「株式会社はなぶさ」に合流し、プロデューサーとして働く。現在、5歳長女、2歳長男、0歳次男の子育て中。趣味はランニングと家庭菜園。

株式会社はなぶさ https://hanabusa-inc.jp/

インタビュー日 2023年4月7日
取材・文 塩本美紀
写真 佐竹歩美

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