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お母さんの不安解消、「寄り添い、つなげる」がわたしの仕事

櫻井京子

一般社団法人ドゥーラ協会認定産後ドゥーラ
岩手 釜石

面談が、起業への焦りを見つめ直すきっかけに

(2022年3月14日追加取材)

─── 京子さん、6月に活動のお話をうかがってその後、コロナ渦中に色々あったそうですね。

はい。8月に子育て支援センターでの仕事を辞めたこともあり、ちゃんと「産後ドゥーラ」を仕事にしなければ、起業しなければと思って。そんな時、ウィメンズアイ の少額助成「コミュニティ・アクション*」の募集を知り、立ち上げの伴走をしてもらえたらと応募しました。

─── 事業計画を立てて、メンターによる面談が何度もあるんですよね?

はい。実は早い時期に「櫻井さん、本音で話してください。本当のところはどうなの?」って聞かれて……。「産後ドゥーラ」を商いにしようって思ってはいるんだけれど、どこか自分に自信がなくて、そういうところがきっと見え隠れしてたんでしょうね。あまり聞かれたくないことも質問されたりして、最初はちょっときついなあって感じたりもしました。

─── そうなんですね。

でも、WEのメンターさんたちは私の活動を応援して言ってくれるわけだから。そうだなあ、私には人の意見を聞くっていう部分が少なかったのかもと思うようになりました。

例えばドゥーラを知ってもらうためにチラシを作る、もっと自分から発信していくというのは、言われてみたらそうなんですが。やっぱり、自信がないところがあったんだと思います。地域のために役に立ちたいと思っているのに、行政から必要ないと言われたりもして……。メンターさんたちと本音で話すことで、自分が逃げていたところを見つめられた気がします。

─── 例えばどんなところでしょう?

産後ドゥーラとして開業したい、と言っても、大都市でのドゥーラほどニーズに出会うのが難しいころとか……。一方で、奨学金で資格を取ったのだからこれを仕事にしなければという焦りもありました。いつまでも、起業、起業っていい続けて、産後ドゥーラってこういうものだ、と思い込んでいたんだと思います。メンターさんに、「櫻井さん、本当にこの計画書みたいなことがやりたいの?」って聞かれて。

─── それで色々考えたんですね。面談してよかったことは何ですか?

いつも「もっと自信を持って」と言われていました(笑)。例えば、自宅訪問をリピートしてくれる方がいることをもっと自信にしていいとか。ドゥーラカフェについても、「そこにある価値を見出して、自信にして!」と。それは、私にはない視点でした。そうか、自分の価値は自分で作っていけばいいのかな、と思えるようになったのが一番よかったことかも。結局、最初に提出した計画書を大幅に見直して、子育てをテーマに、お母さんたちをつなぐドゥーラカフェを3回開催しました。

今までドゥーラカフェで延べ200人以上のお母さんに出会ってきたんですが、多くのお母さんが転勤族だったり、孤立している人だったりして。ドゥーラカフェでは、ここがあったから、釜石の子育てが楽しくできたとか、友達ができたとか、もう一人産もうと思えたとか、嬉しい言葉をもらってきたんです。自分は、そういう言葉だけでずっとやってこられた、これは私がやりたいことなんだなと。

(写真:本人提供)

─── 6月のインタビューでも、ドゥーラカフェは、「産後ドゥーラ」を知ってもらう以上の価値を持つものになっているんだなと感じました。これからどうしていきたいですか?

最終的には、今までの活動を細く長く続けていきたいっていう気持ちに落ち着きました。いろんな形の産後ドゥーラがあっていいし、収入の面で産後ドゥーラだけを仕事にできないのなら、他の仕事を受託したりして「複業」と思ってやっていけばいい。長く続けていれば、理解されもっと必要とされる時もくるかもしれません。

産後のお母さんたちの不安と困りごとをサポートするこの仕事のことを知ってほしいし、釜石での子育てをもっと良くしたい。自分の気持ちの真ん中にあるのは、お母さんたちの目線、お母さんたちに寄り添うことなんです。だからやっぱり、そんな活動をもっとしていきたいなと思います。

*コミュニティ・アクション
NPO法人ウィメンスアイが行ってきた、地域をよくする活動で一歩踏み出す女性への、定期的メンタリングと少額助成のプロジェクト。

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櫻井京子
1984年生まれ、岩手県上閉伊郡大槌町出身、釜石市在住。一般社団法人ドゥーラ協会認定産後ドゥーラ。助産師が活躍する被災地支援団体から「産後ケア」を受けたことで、今度は自分がお母さんたちをサポートする側になりたいと思い、産後ドゥーラの資格を取得。現在は、お母さんたちがホッとできる場づくり「ドゥーラカフェ」など、地域の様々なセクターと協力しながら幅広く子育て支援活動に従事。地域のお母さんの応援団でありたいと思いながら、日々活動している。

一般社団法人ドゥーラ協会
https://www.doulajapan.com/

インタビュー日 2021年6月11日、2022年3月14日
取材・文・写真 松浦朋子
追加取材・文 塩本美紀

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