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心がハマる場所を求めて、転々とした経験はいつしか肥やしに。

瀬川瑛子

ネビラキカフェ オーナー/ネビラキ 共同代表
岩手 西和賀

神楽、自然。パズルのピースはすでにあった

─── ご出身は東京ですよね。岩手に初めて来たのはいつ頃ですか?

大学生の頃です。国際基督教大学の日本民俗舞踊サークルに所属していて、東北の郷土芸能に触れる機会があったんですけど、その関係で岩手に遠征に来ていました。

盛岡市のさんさ踊りや、花巻市の山伏系神楽を朝から晩まで教わるという、結構ディープな合宿で、特に神楽にハマりましたね。もし男性に生まれていたら、卒業後に岩手に移住して神楽衆の門戸を叩きたいと真剣に思っていたくらい。女性だったからその方向は諦めましたけど(笑)。

─── 大学卒業後はどちらに?

農林水産省に入りました。もともと自然保護に興味があって、林野庁に入りたかったのですが、配属されなくて。最初に担当したのは、全国の農政事務所等との窓口業務で、完全なる事務仕事。デスクワークの物足りなさを埋めようと、省内勉強会やマルシェのボランティア、農家の手伝い等に参加していましたが、手元の仕事と現場で出会う人たちとがつながる感じが得られなくて、もどかしい気持ちでいました。

辞めるなら背負うものがないうちに辞めたい、でも自分には強みがない。何をしようかと色々考えた結果、調理師専門学校の夜間部に通うことに決めました。入省4年目、3部署目のときです。

─── え! それはまた、どうして急に?

農水省で同じ部署の人が地域ブランド化支援事業の公募・査定の仕事をしているのを見て、事業にお金を出すよりも、自分で事業をやる方が楽しそうだなと思ったのがきっかけです。当時は、食や農に関して専門的な知識を身につけたい、特に、生産者と消費者の顔が見える関係を具体的に作っていく仕事がしたい、と漠然と考えていました。その手段として、畑と食卓を結びつける料理を勉強しようと思いました。

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