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子育ては楽しんだもの勝ち! 子育てを通じて、私の世界も広がった
沼倉由美
登米市子育てサイト「とめまま」
宮城 登米
子どもの成長とともに、ママ達の環境も変わっていく
─── 確かに、子どもが成長して行くにつれて、子育ての環境も変わっていきますよね。
ところが、ちょうどその頃、登米市を中心に子育て支援活動をしているNPO法人すくすく保育研究所の片岡菜菜江先生に出会う機会があり、予想外の展開になるのです。
菜菜江先生は「ままっぷ」や「すくすくステーション」などアイデア溢れる子育て支援をされてきた、いわば登米市の子育て支援のパイオニア。そんな先生が、「とめまま」をやめようかと迷っていた私に、「もったいない! 登米市で子育てをしているお母さん達のためにも、ぜひ続けて!」と励ましの言葉をかけてくれたのです。そして、全面的にバックアップしていただけることとなり、個人ブログから始まった「とめまま」は、組織として活動するようになりました。メンバーも4人になったんです!
─── 組織になってからは、どのような活動をされてきたのでしょうか?
登米市の子育て支援センターや、民間や個人でやっている子育てイベント情報を紹介するというのはそのまま継続し、菜菜江先生が始めた絵本カフェで、アクセサリーなどハンドメイドのワークショップや茶話会など、子育て中のお母さんが気軽に参加できるイベントの運営をしたり、ママ達のチャレンジのサポートをしたりしていました。「子育て中だから」といろいろなことをあきらめてしまっているお母さん達に、子育て中でも楽しんでいいんだよ、楽しんだもの勝ちだよ! と伝えてあげたくて。
だけど、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されると、こうしたイベントはすべて中止。子育て支援センターも利用できなくなりました。
─── 子育て中のお母さん達は、行き場がなくなってしまい困ったでしょうね……。
そうですね。息子もちょうど小学生になるタイミングだったので大変でした。小さなお子さんを持つお母さんは更に大変だったろうと思います。
子どもが小学生になると、次第に私もあの頃の悩みを忘れてしまって、美化してしまうようになって。ふと、あっ、今の私では、小さい子どもを育てているお母さん達に寄り添ってあげることができないかも……って、思ってしまったんですよね。
─── でも、自分が立ち上げ、ここまで育てていた「とめまま」をやめることに抵抗はありませんか?
実は当初からそういった危機感は予想していて、メンバーが入れ替わっても成長していくシステムにしたいなと思っていました。ただ「とめまま」は組織化されたものの、利益を得ていたわけではなく、ほとんどボランティア活動なんです。だから、いい人がいても、なかなか引き継いでとお願いもしにくくて(笑)。それでも、ここまで続けて来たのは、それなりに思い入れがあったからです。今でも、小さいお子さんを今育てているお母さん達のことを考えたら、先輩ママよりも同じ悩みを抱えているママの方が、よりかゆいところに手が届くのではないかと思っています。一方で「とめまま」は自分たちの成長と共に形を変えてもいいんだよ、と言ってくださる方もいて。とりあえず今私にできることを続けている状況です。
─── お子さんが小学生になってから、生活にどのような変化がありましたか?
小学生になって、子どもに手がかからなくなってきたので、仕事をすることにしました。菜菜江先生が運営している保育園の事務職をしています。
パートですが働いているとそれなりに忙しくて。でも、月末には子育て支援センターの予定表を打ち込まなくてはならなくて、正直大変です。一緒に「とめまま」を支えてくれたメンバーも仕事を始め、コロナの影響もありますが、以前のように積極的に活動ができていません。でも、それでいいと思うんです。だって、子どもの成長とともに、ママ達の環境が変わっていくのは、ごく自然なことだから。
実は私、最近ハマっていることがありまして。
─── えっ? 何ですか?
夫の実家がある東和町米川は、古くから草木染めの伝統があって、震災後、地域おこし協力隊の方がそれをもっと外に広めようと「米川刺し子の会」を立ち上げていたんです。その活動を引き継いだ地元の方や共感した人達が集まって、「とめ*こしぇる」というブランド名で草木染めと刺し子のアクセサリーなどを製作販売することになり、私もそのメンバーの一人として、今、いろいろなものを作っています。
─── お子さんが小学生になって、自分の時間が持てるようになったんですね。
そうですね。「とめまま」はどちらかというと、誰かの役に立ちたいという気持ちでやってきましたが、「とめ*こしぇる」は自分が楽しんでいる感じですね。11年前に登米市にお嫁に来たときは、夫以外知り合いもいない心細い状況から、子育てを通じていろいろな人達に出会い、視野が広がったこと、地域に伝わる草木染めという素敵な伝統に出会えたことなど、楽しいことがどんどん増えてきて。今後、「とめまま」をどうするかはまだ答えが出せていませんが、今を楽しみたいと思います。親が楽しんでいる姿を見せることが、子どもにとっては一番いいことだと信じて。
- 沼倉由美
- 宮城県丸森町出身。結婚を機に夫の実家のある登米市へ。子育て中に利用していた子育て支援センターのイベント情報をもっと気軽に情報収集できるようにと、自ら予定表を作りブログにアップ。それが登米市で子育てをしているお母さんたちの評判を呼び、登米市の子育て支援サイト「とめまま」に発展。現在は、「とめまま」を継続しつつ、「とめ*こしぇる」というグループで、草木染めと刺し子で作る小物販売などを行っている。小2の男の子のお母さん。
登米市子育て支援サイト「とめまま」 https://www.tomemama.com
とめ*こしぇる https://www.instagram.com/tome_cocheru/
インタビュー日 2021年11月10日
取材・文 石渡真由美
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