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ありのままの自分でいい。世界は思っていたよりも優しくて温かかった。
佐竹歩美
日晴り(ひばり)デザイン
宮城 大崎
たくさんの人と関わる中で気づけた自分の特性。ありのままの自分を受け入れられるようになってようやく前に進めた。
─── 『ツナグ編集室』の活動はこれからどうなるの?
メンバーもそれぞれの状況が変化しているので、具体的なことは何も決まっていません。
ただやると公言したものは、時間が空いたとしても、形が変わったとしても責任を持ってやりたい。すでに取材をさせていただいた方には事情を話して、いつかもう一度取材をさせてくださいとお願いしています。私の力不足で頓挫してしまった編集室、それでもそっと見守ってくれているメンバーには本当に感謝しています。
実は……、今回、この取材を受けるべきかすごく悩んだんです。私は何か団体を持っているわけではないし、すごく大きなことを動かしているわけでもない。しかも、始めてみた編集室も道半ば。語れることなんてないんじゃないかと思って。
─── いやいや、そんなことないですよ。
でも、自分が歩いてきた道を振り返ってみたとき、すごい大きなことではないかもしれないけれど、これまでに一緒に仕事をしてきた人たちと生み出してきたものは間違いなく宝物で、かけがえのないものであること。自分の歩いてきた道で出会った人たちも大切な友達であること。ここ最近ですが、「私も十分頑張ってきたじゃん!」と俯瞰して見られるようになったんです。こんな私でも誰かの背中をそっと押してあげることはできるかもと思い、今回取材を受けることにしました。
3年前から、このCOMADOのインタビュー撮影を任されるようになり、地元で頑張っている女性と出会えたのも大きかったと思います。「WE」を通じて出会った人たちも、「Re:School」メンバー同様に優しくて素敵な人たちばかりで。ありのままの自分でいられるんです。そして、最近になってやっと気づいたんです。世界は思っているより優しくて温かかったんだな、と。
写真やデザイン、イラストは自分の唯一の武器で、自分に力をくれる大切なものです。それがあったからいろいろな人と知り合えて、今の自分がいます。私の写真やデザインを「いいね」「好き」と言ってくれる人がいたから、自分のこともだんだんと好きになっていきました。
技術的なことはまだまだ勉強不足ですが、写真を残すことやカメラから見える景色の美しさ、自然や人とつながる感覚は私にとってかけがえのないものです。一生写真は撮り続けたいと思っています。
─── 歩美さんの写真、ほんとに好き。「いい人を紹介してくれてありがとう!」ってみんなが言うので、私まで嬉しくなる。
実は最近になって、もう一つ分かったことがありました。それは自分の特性です。ストレスや雑音があると、聞こえているのに聞こえない病気を持っていたこと、いじめのことはもうとっくに精算していると思っていたけれど、生理的に身体に出てしまうことがあること。
組織にいたとき、電話対応に悩まされていたり、飲み会で人の話がまったく聞こえなくて楽しめなかったり、人の話を集中しないと聞き取れないので会議の後はどっと疲れて寝込んだり。人と話したいのに、なんだかうまくいかない。それをずっと自分の性格のせいだと思って、自分に自信がないまま生きてきたのですが、ずっと感じていた違和感の正体が分かったことで、やっと自分の中で受け止めてあげられるようになりました。それに気づけたのは、この2年の間にたくさんの人たちと出会い、対話をしてきたからです。「Re:School」や「WE」の人たちからの学びや、ツナグ編集室でみんなと活動し成果も失敗も経験できたからです。
私が地元で発信をしていきたい理由。それは地元を元気にしたい、楽しくしたいという気持ちが一番だけど、その根っこにある動機はもともとの正義感の強さや中学の頃に小さな世界で必死にもがいていたからこそ、同じように苦しんだり、困っていたりしている人がいるなら、助けたいという気持ちがあるからだと思います。ただ見ているだけではイヤなんですね。
ここまで来るのにすごく時間がかかって、いまさらかもしれません。でも、今やっと本当の意味で自分を受け入れることができ、色々な「揺らぎ」も感じて受け止めながら、地に足がついた状態で前に進めると確信しています。
自分のこと、家族も大事にできるようにするには体力がないとできない! と感じ、ジムでの運動も最近始めたんですよ。
- 佐竹歩美
- 1988年、宮城県大崎市生まれ。写真家・デザイナー。高校卒業後、横浜の美術大学に進学し、デザインを学ぶ。東京で教育系の新聞社でイラストレーターとして働いたのち、宮城にUターンし結婚。大崎に暮らしながらデザイン会社で働く道を探るも、激務と家庭との両立に悩みフリーランスに。それまで柱にしてきたデザイン、イラストに加え、地域の写真家として家族写真などにも取り組む。COMADOのインタビュー撮影も多数。地域の人の「想い」に寄り添う仕事をしたい。
日晴りデザイン https://note.com/hibari_design/
インタビュー日 2023年8月23日 追加取材 2024年7月24日
取材・構成・ライター 石渡真由美
撮影 古里裕美
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