036

海をイメージしたハンドメイドで好きなことを表現し、気仙沼を盛り上げたい

菅原理香

aqua labo kesennuma/ハンドメイド作家
宮城 気仙沼

震災がなければ、今の自分にはなれなかったと思うんです。

─── ブランドを始めてからは、どのような活動をされてきたのですか?

まずはホームページを立ち上げ、復興イベントなどに積極的に参加しました。転機が訪れたのは、仕事を始めて2年ほど経ったときです。ある復興イベントで起業家コンテストというものがあって、ダメもとで応募してみたら、特別賞をいただいてしまい、フランスで販売研修の機会を得ることができたのです。長いこと専業主婦で、一度も海外に行ったことがなかった私にとっては、とてもすごい出来事で、現地で見るものすべてが新鮮で、驚きの連続でした。その研修では、マルシェで自分の作品を販売することができるのですが、残念ながら売れ行きはさっぱりで(笑)。飾りで置いていた折り紙の方に注目が集まり、「これを売って欲しい」って言われてしまいました。でも、そのときの経験が大きな自信になったし、知識も増えて自分の向上につながったと思っています。

─── そこで、店舗を持つことに決めたのですか?

そうですね。いろいろなイベントに出店したときに、「普段はどこで買えるのですか?」「お店はありますか?」と聞かれることが増え、どこかに拠点があった方がいいのではないかと思うようになり、2015年に店舗兼工房を構えることにしました。といっても、裏通りにある普通のアパートですが。自分で壁に漆喰を塗ったり、畳をフローリングに張り替えたり、棚を作ったりして。私、DIYも好きなんですよ。何か新しいものを作るよりも、あるものを活かしてアップサイクルすることに魅力を感じて。子ども達が大きくなって着なくなった服をポーチやカバンにリメイクしたりも。自分でやるだけじゃなく、友人と一緒にチームを組んでやってみたりもしました。店舗では他の作家さんの作品も委託で扱ったりしています。

気仙沼の人って、ハンドメイドが得意な人が多いんですよ。だけど、この土地の風習なのか、あまり表に立って目立つことをするのは嫌という人が多くて。内向的というか、面倒くさがりというか。でも、せっかくステキなモノを作れるのに、もったいないなってずっと思っていたんです。そんな人達の背中を少しだけ押すことができれば、そしてハンドメイドで気仙沼を盛り上げることができればと思い、「森のてしごと市」というマルシェを始めました。

─── 理香さんが先頭に立って始めたのですか?

そうなんです。気仙沼の山の方に八瀬(やっせ)という集落があって、そこにある廃校になった古い小学校で、ハンドメイドのイベントをやりたいと思って。私一人では実現は難しいと思ったので、知り合いの作家さん達にも協力してもらい、出店者を集めるところから始めました。場所がかなり不便なところにあるので、正直どこまで集められるか心配だったのですが、最終的には45ブースもの出店が決まり、たくさんのお客さんが来てくれました。八瀬にこれだけの人が集まったのは初めてのことだったみたいです。運営側の苦労はありましたが、挑戦して良かったなと思いました。また一つ、自信につながりました。

「森のてしごと市」は、2018年、2019年と2年開催されましたが、2020年からはコロナでイベントは軒並み中止。それまでは、気仙沼の観光協会が観光客向けに「しごと場・あそび場ちょいのぞき気仙沼」という体験ツアーを実施していて、うちの店でもアクセサリーのワークショップをやっていたのですが、コロナ以降は観光客がパッタリ来なくなり、経営が苦しくなりました。なんとか持ち堪えようと、夜は居酒屋でバイトをしていました。秋頃から少しずつ観光客が増えてきましたが、また感染が拡大すると、どうなることやら……。

でも、今はこの仕事=自分、のように感じていて、この仕事に就く運命だったのかなと思っています。焦らず、ゆっくり続けていきたいです。

─── もし震災がなかったら、と考えることはありますか?

ありますね。もし震災がなかったら、私はずっと専業主婦をやっていたのだろうなって。震災では多くのものを奪われてしまったけれど、震災がなければ今の自分にはなれなかったと思うんです。好きなことを表現できるようになって、私の世界は大きく広がりました。

震災のときに3年生だった娘はすでに家を出ていて、1年生だった息子も4月から家を出ます。子ども達がいなくなったら、絶対に寂しくなると思って、7月から猫を飼い始めました(笑)。好きな仕事を見つけ、いろいろなことに挑戦してきたけれど、まだまだこれからだと思っています。やりたいと思ったことは、まずはやってみて、うまくいかなかったらそのときに考えればいい。やらずに後悔はしたくないんです。これからも大好きな気仙沼で、この町の良さを伝えていけたらと思っています。

1 2
菅原理香
1981年、気仙沼生まれ、気仙沼育ち。20歳で結婚し、二児の母になる。震災直後に、インターネットで必要物資を発信し、全国からの協力のもと物資支援の活動を行った。2013年に気仙沼をモチーフにした手作りアクセサリーブランド「aqua labo kesennuma」を設立。気仙沼で開催された「東北マルシェ™」起業家コンテストで入賞し、南仏プロヴァンスのマルシェに出店する研修を経験。2018年、2019年に、気仙沼でハンドメイドされたモノを集めた「森のてしごと市」を主催。

Aqua labo kesennuma https://www.aqua-labo-kesennuma.com/

インタビュー日 2021年12月17日
取材・文 石渡真由美
写真 志田ももこ

おすすめインタビュー