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北海道でのつながりが、自分の故郷ですすむべき道を決めた

柏崎未来

一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校
岩手 釜石

子どもは子どもなりに、大人を見ている

─── 実際に釜石に戻ってきて活動していく中で、心境の変化ってありましたか。

もちろんありました。自分の気持ちが追いつかなくて、自分は支援者でもあったけど被災者でもあったから気持ちが落ち込んで、いろいろ声がかかっても、やりたくないっていう気持ちにもなったし、逃げ出したいときがありましたね。

2011年の夏ぐらいにすごい心身ともに疲れて、1回北海道に向かい荷物取りに戻っていろいろ考えたら、釜石にすぐ戻りたいって思って。そのときは一番落ち込んだっていうか、気持ちが落ち着かなかったですね。あとは今後、どう活動を絞っていくか考えたときに、子どもの活動を収益事業にしていくのは難しいという話もあって。やらない方がいいのかなとか、離れようかなって思って、一度自分の心が離れたんです。

でも、やっぱり必要としてくれる子がいたりとか、子どもたちに会うと自分が元気になっているっていうことがわかったから、来てくれる子がいる限り、やり続けようと思うようになりました。今思うと、一緒に見てきた子たちが大きくなって、活動を手伝ってくれたりしているから、あのときの判断は間違っていなかったし、やってきてよかったなって思います。葛藤はしたけど、企画に参加している子が「ジョイみたいになりたい」って言ってくれたことは、すごく嬉しかったんですよね。

─── 子どもたちの声が、続ける動機になった?

一番やろうと思ったきっかけは、子どもたちの声もあるんですけど、中越の方に視察に行ったとき、中越地震当時6年生の女の子が、ガイドとか地域のために何か頑張りたいって言ってたんです。何でそういうふうに思ったの? って聞いたら、頑張ってる大人の姿を見てきて自分も役に立ちたいと思ったって話してくれて。子どもは子どもなりに、大人を見てますよっていう話を聞いて、頑張ってやり続けようと思いました。

─── 現在はどんな活動をされているんですか?

私たちができることは、子どもたちの場づくりだから、地域の人にも協力してもらいながら、コロナ禍における安全安心な野外の遊び場である「あおぞらパーク」という活動をやってきました。震災のときに外に出られなくてストレス抱えているっていうところも見てたし、当時と完全に似ているわけじゃないけど、同じような状況もあって活動を始めました。新たにつながった子どもたちだったり、親御さんだったり、いろんな人がつながれたので、やってきてよかったなって思っています。

今までは、岩手県外の人がたくさん支援をしてくれたんですけど、あおぞらパークの取組みを通じて、釜石市内や岩手県内のネットワークが広がったような気がします。コロナの後も、プレーパークみたいな遊びの場づくりをしていきたいし、教育にも力を入れていきたいと思っています。

─── ほかに変化は、ありますか?

昨年、JSCAの試験に挑戦したことですね。カヤックとかSAPとかのインストラクターの試験だったんですが、久しぶりの試験はドキドキしました。

今年はJSCAのインストラクターという形で、子どもたちや大人の方に指導できます。個人のスキルを上げて、自信を持って自然体験に関われるようにならなきゃっていうところで、昨年度は自分に投資した部分が大きかったですね。ほかにも、今は仕事で安全管理などを実践する立場になって、改めて自然体験活動のインストラクターを勉強し直そうって思っています。

─── 大学とか高校のときに思ったことと、ブレてないですよね。

確かに、言われてみればブレてないかもしれない。浮き沈みがありつつだけど、それでやっていけるの? とか言われた時に、市役所で働いてみようかな、と思うときもあったんですよ。これまでNPOとか自然学校でしか働いたことがないから、自分の勉強不足だけど、無知なところをすごく実感するときがあって。ちゃんとした企業で働いた方がいいのかと思ったりしたこともあったけど、すぐ飽きるし嫌だなと思って、やめました。

多分自分がそう働いてるのを想像したら、つまらなくてやめちゃうんだろうし、今は自分で助成金をとったりしながら、本当にやりたいことをちゃんとやれているので。なんだかんだ寄り道というか、いろいろあちこちを見ている中で、あっちはいいなとか思うけど、結局はやっぱ、今の生き方が一番好きだなって思っています。

ずっと同じように生きてきたけど、これからは新たな分野にも挑戦していきたいです。

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柏崎未来
1985年生まれ、岩手県釜石市出身。一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校理事。高校卒業後、北海道の大学に進学し、野外教育分野を専門的に学ぶ。黒松内ぶなの森自然学校で勤務後、東日本大震災をきっかけにUターン。現在は、三陸ひとつなぎ自然学校で小学生の放課後の居場所づくりや野外の遊び場づくり、自然体験活動など、子どもたちを対象とした場づくりを行なっている。好きなことは、焚き火や、自然の中をゆっくり歩くこと。

一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校 http://santsuna.com/
Facebook https://www.facebook.com/miki.kashiwazaki.77

インタビュー日 2021年6月2日
取材・文・写真 松浦朋子

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