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よそ者だから見えるこの町の良さ。東松島の魅力を発信するのが私の役目

関口雅代

東松島市移住コーディネーター/グラフィックデザイナー/市民団体H×Imagine代表
宮城 東松島

子育て世代が安心して暮らせる町に。新たな挑戦が始まった

─── 地域おこし協力隊の任期は3年と聞きました。その後も東松島に残ることになったんですね?

私が協力隊3年目に入った頃、人口減少対策に力を入れる事が市で決まったんです。移住促進も始めようということになり、地域のコミュニティデザインや、情報発信などにも力を入れていた私に白羽の矢が立ち、協力隊卒業後に引き続き「移住コーディネーター」として市役所に席を置く事になりました。

東松島にはこれまで27人の地域おこし協力隊がいたんですが、そのうちの24人が今も東松島に暮らしています。これは全国的に見てとてもめずらしいケースで、東松島がいかに暮らしやすいかを表している数字だと思うんですね。卒業生は漁師になったり、農業や林業に就いたり、カフェを始めたり、クラフトビール工場を作ったり、結婚してママになったりといろいろで、みんなそれぞれ楽しそうに暮らしています。

移住コーディネーターの仕事は、人生を変える決断に寄り添う事です。お一人お一人がどんな物語を持って? 終えて? 新しい暮らしを東松島で始めたいのか。普通の引っ越しとは違い、移住コーディネーターを経由して暮らしを変える人は、より良い人生を見つけたいんだと思います。だから、地域おこし協力隊希望者もふくめ、先ずは東松島の人々を深く知ってもらう事から始めています。きっと東松島を好きになったら幸せになれるはずだから。

─── なるほどー、雅代さんの東松島愛が感じられます。

だけど、長い目で「どういう町だったら移住したくなるんだろう?」と考えてみると、たぶん、若い世代が子育てをしやすい町が、結局、あらゆる世代の人に選ばれていくんじゃないかと思ったんです。

子どものいない私ですが、今、ご縁があって東松島市のコミュニティ・スクールに関わることになりました。コミュニティ・スクールとは、学校と保護者、地域住民が一つになって、よりよい学校づくりを考える国の取り組み。それが市内全小中学校に配置されているのはめずらしいんです。ところが学校の先生は日々の業務で忙しいし、保護者も仕事をしている家庭が多く、東松島らしい成果を出していない印象があります。 同じ時期に若い協力隊の子たちの中にも学校に関わる子たちが数人いて、子どもたちの成長に真剣に立ち向かおうとしていて。でも、教育って結構大きなテーマじゃないですか。やるとなるとハードルが高いし、覚悟が必要なんですね。だけど、若い子たちがこの町のために頑張ろうとしている姿を見て、私ももう一踏ん張り頑張らないと、って思って。

─── 新たな分野への挑戦になりますね。

そうですね。仕事は増えますが、私を受け入れてくれた東松島に恩返しをしたいという気持ちはいつもあります。それに実は、学校や教育には私にも思いがあって……亡くなった父が教育分野の人でした。自分は10代の時にモヤモヤした気持ちがあって勉強を辞めてしまったんですね。素晴らしい先生との出会いがあり美術の道に進むことができましたが、勉強を続けたらよかったという気持ちも少し残っていて。こうしてたまたま暮らすことになった町で、市内のコミュニティ・スクールに関わる大事な役割を担うことになりました。父も喜んでくれるのではないかなと思います。

地域おこし協力隊、移住コーディネーターとしてこの町に7年間暮らし、走り続けてきましたが、あと3年くらいかけて若い世代にバトンタッチしていきたいなと思っています。

─── バトンタッチのその先のことは何か考えているんですか?

その先ですか? その先はまだ分かりません。でも、たぶんここにいるような気がしますね(笑)。本当に東松島が好きでしょうがないんですよ。

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関口雅代
1975年、東京都生まれ。グラフィックデザイナー。大学卒業後、音楽業界でCDジャケットのデザイン制作に13年間携わる。東日本大震災・災害ボランティアをきっかけに『東北食べる通信』に出会い、縁あって宮城県東松島市へ移住。3年間の地域おこし協力隊経験を経て、現在は移住コーディネーターとして、東松島市の魅力を発信している。さらに、市民団体「H×Imagine」を立ち上げ、野蒜海岸のビーチクリーニングを呼びかけたり、2018年には市内の女性たちとともにビーチナイトバー「バーババー」を開催し800人を動員するとともに恒例イベント化。まちをワクワクさせる企画を立てるのが好き。現在は東松島市のコミュニティースクールの充実にも力を注ぐ。

インタビュー日 2022年10月6日、2023年10月5日
取材・構成・文 石渡真由美
追加取材・文 塩本美紀
写真 佐竹歩美

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