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足元の暮らしを見つめて、楽しく日常を送ることを大切にできたら
小池晶子
デザイナー/クラフト作家/如春荘の会 副代表
福島
日常の暮らしのストーリーをみつけて、演出し続ける
2019年から縁あって、福島県立美術館そばにある福島大学の厚生施設だった「如春荘」という古民家を借りることができました。今は、ここを日々の暮らしを豊かにする場所として活用することを目指して、縁側喫茶などを通してコミュニティスペースのようなかたちで運営をしています。
─── ここは、ほっと一息つける、ゆったりと時間を過ごせる場所ですね。
これまでやってきた一時的な会場美術と違って、如春荘という場をひらき続けることで、いろんな人の居場所になってほしいという願いがあります。老若男女それぞれの人が混じり合う場にすることで、年代の違う人と人とのつながりが広がっていく、サードプレイスのような空間になっています。私自身、この空間の良さを生かす装飾や、良質で居心地の良い空間演出を続けられるやりがいもありますね。
─── 実際にこの場所をはじめてみてどうですか?
如春荘を借りた当初は、運営メンバーたちがコワーキングスペースとして利用したいねっていうとこからでした。でも、すごく素敵な場所だったので、いろんな人に来てもらえたらと思うようになって、コミュニティスペースや貸しスペースとしての機能をもつようになりました。いまは運営体制が整っていない課題があり、不定期で場を開いているんですけど、もっと毎日開けられるようにしたいなとか、いろんな人が自由に借りたりできる仕組みをつくれたらと考えています。
─── 晶子さん自身がさまざまな活動に関わるなかで、大変なことってありますか?
会場美術やデザインの仕事って、関わる人が多ければ多いほど、周囲との調整が大変で。町おこしの仕事を受けた時は、関係各所との調整や人間関係にとても苦戦しました。
2016年から、木彫のクラフト作家として、個人の作品を製作するようになりました。震災があって、福島のこと、支援のことなどを考え続けきたのですが、そうした視点のデザインではなく、福島でも自分軸での表現作品をつくれることをしたいなって思ったからでした。人になかなか伝わりづらい空間デザインなども、木彫りの作品を見せることで窓口ができて、こんなデザインできるかな? と他の地域から依頼されることも増えてきました。いつものコミュニティじゃないところで挑戦したことによって、仕事の幅が広がって、自分の仕事への自信にもつながりました。依頼があってデザインをする受け身の形だけではなく、自分軸で価値をつくっていく仕事を通して、それぞれのバランスが取れることが大事だと思っています。
─── 自分の表現作品と依頼されるデザインと、それぞれのバランスが大事なんですね。
ものづくりって形になるからこそ、分かりやすく評価がされるんです。それが仕事への信頼にもつながって、またそこから新しい依頼がくる。ものをつくるときには、演出するための空間とストーリーがある事も大事です。そういう意味では、如春荘ではこれからも日常の暮らしのストーリーをみつけて、演出し続けることが楽しみです。この地域ならではの歴史を調べたり、何が必要か考えたり、現在進行形です。昔の懐かしさを再現するのではなく、福島市に新たな賑わいをつくっていくことができたらなって思います。
─── 最後に、今後チャレンジしたいことってありますか?
いまは個展ができたらいいなと思っています(*2021年7月に開催)。コロナ禍なこともあり、なかなかイベントをやれる状況でもないのですが、篭って作業するのも好きなので……。これを機に内側を耕したいです。自分の内面とか、いまあるものとか……。一人でできる表現を深めて、また落ち着いたらそれを沢山の人に見て感じて、体験してもらえたら嬉しいなって思っています。
- 小池晶子
- 1980年福島市生まれ。京都精華大学立体造形専攻を卒業後、東京で映画のセット装飾や小道具の制作など美術装飾に10年携わる。福島にゆかりのあるミュージシャンの遠藤ミチロウ、大友良英、詩人の和合亮一が代表となって始めた「プロジェクトFUKUSHIMA!」への参加を機に、2014年より福島市を拠点にフェスやイベントの会場美術、木彫、デザインワークを中心に活動中。2018年より有志メンバーとともに如春荘の運営をはじめる。
●手作業 https://kkoikeakk.wixsite.com/tesagyo
●如春荘という場所 https://www.facebook.com/joshunso
インタビュー日 2021年2月10日
取材・文・写真 鎌田千瑛美
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