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地域の宝にもっといろんな角度から光を当てて、反射した光を世界中に送りたい
鈴木英里
東海新報 代表取締役
岩手 大船渡

気仙にある底なしの魅力、まだまだ宝が眠っている
─── 同じ女性として、かっこいいなと思います。女性が興味を持つ紙面作りも意識しているとのことでしたが、どうしたら、ローカルに若い女性がもっと住みやすくなると思いますか?
どうしても地方では、役割を固定してみられがちですよね。母親なんだから……とか、周りや家族の理解がないと働けないとか。周囲の理解があるかないかって、気持ちのうえで大きく違いますよね。地方は特に、「いろんな生き方があるんだ」という先行事例数が少ないと思うので、他人は他人、生き方は千差万別という価値観を、もっと老若男女に根付かせる必要があるんじゃないかなと感じます。
─── そうですね。まだまだ、「こうであるべき」という意識が強いと感じますよね。
みんなの意識が変わっていかないといけないですね。「女性活躍」というのは、女性だけが頑張ればいいのではなくて、男性にも当事者意識を持ってもらわないと実現しないんですよ。人さえ変われば、間違いなく、町は変わる。なんだかんだで人なんですよね。人が生き生きしているかどうかってすごく大きくて。従来の価値観からは外れているけど、生き生き暮らせているよというモデルが増えていくと、こんな生き方もありなんだなと浸透してくと思うんです。地域のポジティブな面や多様な暮らしを私たちが発信していくことは、大事だと思っています。
─── 若い世代の女性に知ってほしいことはありますか?
女性だけでなく若い人全般に言えることですが、連続テレビ小説「おかえりモネ」を見ていると、この質問の答えがこのドラマにぎっしり詰まっているなと感じています。最初から「やりたい」を持っている人ばかりではありません。そんな中で、自分の暮らす地域について学んだり、周囲の人のことをよく見たりしていろんな考え方にふれることで、自分でも知らずにいた自分自身のことが、ある日突然、くっきりと見えてくることがあるんですよね。

─── 人とのふれあいですね。
そうですね。自分の中にない「考え方」「生き方」は、人と接することでしか知り得ません。他人の考え方や生き方を自分の中に取り込んで、消化していかないと、自分という存在は豊かになっていかないものです。
人と人との距離が近いということは、自分自身を豊かにするチャンスがそこら中にあるということです。これは関係性が希薄な都会では難しいことも多いし、地方ならではのアドバンテージですね。
─── 田舎で暮らす人にとっての特権ですよね。英里さんが思う、この地域の一番の魅力は何だと思いますか?
歴史、自然、文化、人……一つ一つは小さいことであっても、全部キラキラして見えます。毎日が宝探しですね! 私はこの地域で生きることを、そんなふうに捉えています。一つ素敵なお宝が見つかると、次の宝を探し当てるための「地図」がまた与えられる……そういうクエスト(探求)を一生続けていけるくらい、深掘りできる底なしの魅力があるところ。まだ表に出ていないポテンシャルを秘めた地域だと信じさせてくれるのがこの気仙の良さです。
─── 「宝探し」、なんだか、わくわくしますね。
はい。取材をしていて感じるのは、一度外に出て戻ってきた人や、移住してきた人には、この地域の人たちがまだ気づけていないものに気づく力が備わっているなって。地元の人にとっては「あって当たり前」だと思っていたものが、外から見ると当たり前ではない、ということがよく分かるんですよね。そして、その「あって当たり前のもの」こそが、私のいう宝物だったりするわけです。そうした宝を持ち腐れさせたくない。もっといろんな角度から光を当てて、反射した光を世界中に送りたいと思っています。
─── 最後に、英里さんが若い世代に伝えたいことはありますか?
「誰かの役に立つかどうか」なんて考えなくていいということです。「自分の好きなことをしていたら、誰かの役に立った」ということも往々にしてあります。地域の人たちは、若者がここで生き生きと過ごしてくれていると知るだけで元気になれますから、まずは自分がこの地域で楽しく暮らせているかな? ということを大事にしてくれれば最高だと思います。

- 鈴木英里
- 1979年生まれ、岩手県大船渡市出身・在住。東京の大学を卒業後、総合出版社に勤務し、雑誌編集の経験を積む。27歳の時にUターン。家業である「東海新報」 (いわゆる気仙地域である大船渡市、陸前高田市、住田町を発行エリアとする地域紙)で、記者として取材で地域を駆け回る日々を送る。2020年4月に代表取締役に就任。散歩や探検など、身近な場所を歩いていろんなものを見つけるのが好き。
東海新報 http://tohkaishimpo.com/
Facebook http://www.facebook.com/tohkaishimpo
インタビュー日 2021年7月29日
取材・文・写真 吉田ルミ子
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