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お母さんの不安解消、「寄り添い、つなげる」がわたしの仕事
櫻井京子
一般社団法人ドゥーラ協会認定産後ドゥーラ
岩手 釜石
私にもできる、仲間たちとの出会いにより視野が広がった
─── それで、ドゥーラの資格を取得しようと思ったんですね。
次女が離乳するまで待って、産後ドゥーラの勉強をはじめました。震災支援を続ける助産師のネットワーク団体から奨学金をいただいて、夫の協力を得て子ども達を見てもらいながら、土日コースで何度も日帰りで東京と釜石を通いました。外に思い切って行ってみたことで、普段関わることができない人たちと出会えたし、全国には同じような思いをもった人がたくさんいることに気付いて、視野がとても広がりました。産後ドゥーラを学びに行く前は、医療職だから支援ができると思いこんでいたのですが、身近な立場だからこそ出来ることもあるのかなと感じましたね。
普段出来ているような家事ができなくなる状態とか、自分が体験してきたけど上手くまわりに言えなかったことを、「あなたが経験してきたことが活きて産後ドゥーラとなるんだよ」と、学びの中で言われ、とても印象的でした。また、熊本地震の時にお母さんたちのケアをしていた方々も学びに来ていたので、被災の気持ちや、悩みを共有できたりもしました。
─── 「産後ドゥーラ」の資格を取ってからはどうでしたか?
ドゥーラを取ったは良いけど、いきなりお宅に伺うのも難しいなと悩んでいたんですね。その頃、釜石に「カフェ・ブルーア・シエーロ」がオープンする時期で、イベントに参加してみたんです。そこで、お店のコンセプトが「親子で寄れる場所づくり」だということを知り、オーナーの山崎鮎子さんに産後ドゥーラのことを知ってもらう「ドゥーラカフェ」がしたいとその場でお願いしたところ、快諾して頂けたので翌月から早速始めました。最初は、お母さんたちとお茶を飲むだけのイベントでした。それから徐々に、アロマの虫よけスプレー作りなどのちょっとした楽しみや学びのイベントも、一緒にやるようになりました。
─── 楽しそう!
ドゥーラカフェに来たお母さんたちが、お母さん同士で誘い合って、またカフェ・ブルーア・シエーロにお茶飲みに出てこられていたらいいですよね。
みそソムリエや足ツボ、骨盤軸整体など、何かが得意なお母さんにそれぞれ講師になってもらい、私は講座をするお母さんのお子さんをケアするなどしてサポートしています。ここで講師をしたことで、他のところからも講師依頼が来たり、そのお母さんの得意なことが、ちょっとした仕事になることもあるんです。嬉しかったのは、ドゥーラカフェで講師をしてくれたお母さんが、ゲストハウス「あずま家」さんを借りてマッサージの仕事を始めたことですね。そうやって、お母さんたちに勇気が出てくるというか。
─── 「産後ドゥーラ」としてのご自宅訪問はどうですか?
例えば、出産と引っ越しが重なったお母さんのところへ、沐浴とご飯のサポートをしに行きました。サポート後、「櫻井さんがいてくれたから、3人目を産もうと思った。 自分の身寄りもない土地で出産できると思っていなかった。」と言われ、今後の活動を悩む時もあったけれど、自分がやってきたことは無駄ではなかったなって思えて、とても嬉しかったんです。
県立釜石病院でお産が取りやめになることもあって、地域のお母さんにこれ以上不安になってほしくないって思っています。ドゥーラカフェでは、自分がつながってるお母さんにしか声をかけられず、つながっていないお母さんと、どうつながっていけるかが課題だなと思っています。