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心と体に持つ“ささくれ”のような困りごと、ヨガを通して減らしていけたら
吉田愛
ヨガインストラクター/バランスボールインストラクター
岩手 陸前高田
体だけを鍛えるのではなく、心も強い女性に
─── 女性は自分の心と体に、もっと目を向けたほうがいいんでしょうか。
そうですね。本当は、体の不調は当たり前ではないんです。でも、仕事や家庭があると、自分のことは後回しにしがちになることも多いですよね。でも自分の体が発信するシグナルは受け取ってほしいと思います。女性ってすごく我慢強い。人のためも大切ですが、まずは自分を大切に。その気持ちはクレセントシティ*に行って、より強く思ったんです。
*米国カリフォルニア州クレセントシティ市。東日本大震災で流失した高田高校の実習船を同市の高校生グループが返還したことをきっかけに、陸前高田市の友好姉妹都市となり交流事業が始まる
─── 愛さんは、陸前高田市が主催したクレセントシティ市での女性のリーダーシップ研修に参加されたんですよね。
2019年12月、1週間とちょっとですね。滞在中は現地のNPO団体やネイティブアメリカンの女性弁護士など、現地で活躍する女性リーダーのお話を聞かせてもらいました。
─── 印象的だった出来事はありますか?
クレセントシティにある高校のすぐ近くにある施設でお話を聞いたことです。そこは、悩みを抱えた高校生が、いつでもすぐに駆け込める場所なんだそうです。看護師さんがいつもいる、いわば校外保健室のようなところでした。例えば望まない妊娠や不登校など人に言えない悩みがある高校生の相談を受けて、必要に応じて外部の支援機関と連携してサポートする活動をしていました。
このような場所がある理由ですが、この地域の沿岸部では、性に対する知識の乏しさから低年齢での妊娠、出産が多くあるそうです。知識の貧しさから、低年齢出産がおき、さらに知識の貧困を招くという負の連鎖になっている。自分を大事にする価値観が低くて、嫌なことにNOと言えない女性も多いと聞きました。
─── クレセントシティの看護師さんの活動が、愛さんの活動に影響していますか?
女性が自分の体を大事にするためには、ある程度心の強さも必要なんですよね。体だけ鍛えてもどうしようもないことに気がつきました。外見だけじゃなく、内面も少しずつしなやかに変われるようにって。日本の活動でも意識したいと考えるようになったのは、クレセントシティの看護師さんの影響かもしれません。
─── そこから、愛さんはヨガの先生としてどんなことを意識していますか?
気持ちを話してもらえることがあれば、よくお話を聴くことですかね。例えば、ぽろっと「今、更年期が辛くて……」って気持ちを話してくれた方が、「ヨガをした日は、体調がいいよ」と嬉しそうに教えてくれるんです。ヨガでいい方向に変われたのかなと思うと、私も嬉しくなりますね。
なかには他力になっている人もいます。「痩せさせてください」とか。でも、私が痩せさせるというのは無理なんですよね。「私は神様じゃないのでできないですよ。自分でも動かないと」って言ってしまいます。
─── なんだか鍼灸院に行った時の愛さんを思い出しました。
そうですね。だからこそ、他力にならずに自分で気づいて動くことが必要なことを気づいてもらえたら。私ができることは限られていますが、生徒さんのお話をよく聴いて何かいい方法を伝えて、少しでもいい気づきを持ち帰ってもらえるといいなと思っています。