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東北の町に暮らす女性たちの悩みに、ひとつひとつ、ただ、向き合っていきたい

栗林美知子

NPO法人ウィメンズアイ理事、南三陸所長/パン・菓子工房oui工房長
宮城 南三陸

「もっと身近に関わりたい」その気持ちから移住を決意

─── 震災後2年間は、拠点は関東においてボランティア活動をしていて、2013年に登米に移住されていますよね。移住を決めたきっかけは?

よく聞かれるんですけど、もうほんとに自然とそうなったというか……。直接的にはやっぱりウィメンズアイが法人化したことが大きかったですね。それまで2年間、代表の石本(めぐみ)が現地にいてくれて、私は東京を拠点にRQWのボランティアをしていました。その後、塩本(美紀)たちとウィメンズアイとしてNPO法人を立ち上げようということになっていくんですね。

当時私は、関東にいて平日は仕事をしながら週末や夜にボランティアをするという形でしたが、やっぱり現地のことがずっと気になっていて。もっと関わりたいという気持ちが強くなっていたし、仕事との両立に体力的な限界がきていたのもあると思います。

─── 実際に移住してみて、新たに気づいたことはありますか?

それまでもWEでは女性に向けた支援や、やりたいことを応援するプログラムなどさまざまな活動を行ってはいたんですが、実際にいつもここにいるようになると、同世代や若い女性との交流が増えて、もっと日常的な話を身近に聞けるようになりました。

震災後にはさまざまな支援プログラムがあって、一時的にそうした講座を受けても、日常に戻ったときに、実際に女性たちが地域で一歩踏み出すことや活動を続けていくことが難しい実態があったんです。

そこにどんな問題があるのか、女性が新しく行動することを阻んでいるものや、彼女たちが悩んでいることがリアルに見えてきたと思います。

─── それは、例えば?

女性は、結婚・出産とライフステージが変わると、優先順位が変わっていきますよね。だからやりたいことや、やれることに、制約も出てきます。特に、東北地方では、結婚後、女性は家に入るという文化を根強く持っている年長者も多く、特に嫁の立場の人は、子育てや家を守る役割に重点が置かれる傾向が強いです。

だから、結婚後も自由に自分のしたいことをしようとか、アイディアを持って起業をするとかいう行動をとると、煙たがられることもあります。地域社会の中で目立つ行動をとることで、家庭内の立場がつらくなることもあるとよくわかりました。

─── それでも、ずっと女性が元気に活躍できる地域社会を目指して、奮闘されてきたんですよね。

子育てにどっぷり関わること自体は、もちろん悪いことではないです。でも、その中で悩んだり、小さくてもいいから次に進んで挑戦してみたいと思ったりする人もいる。そういう人には何か機会があるといいなと思いますし、子育て中の女性が社会と接点を持ち続けることは大切だなと思うんです。家にこもってほとんど周りとつながりがなくなることが一番辛いことですよね。そこをなんとかしないといけないと思って、活動を続けています。

─── 具体的には女性に向けたどんな支援を行っていますか?

やっぱり女性同士がつながれる機会を作ることが大切だと思っていて。女性のエンパワーメント講座は続けていますし、パン工房を始めてからは、お客さんとして来てくれる方達、WEの企画するワークショップやイベントに参加してくださる方々とも関係を持ち続けています。

ここ数年のコロナ禍もあり、生活が苦しくなったり、一人で不安を抱えてしまう人も多いので、専任のカウンセラー数名と共に「女性と女の子の相談窓口」という相談事業も始めました。家族やパートナーとの関係など、さまざまな相談を電話や対面でも受け付けています。

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