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旅の途中で立ち止まり、ママの笑顔を増やしたいという原点の想いに返る

志田ももこ

カメラマン/コソダテノミカタ
宮城 気仙沼

ママたちの笑顔が見たい。ゲストハウスを母子支援の場に

─── 「架け橋」はその後、旅行者のゲストハウスであり、同時に地元の人たちにとって子連れで訪れることができるカフェだったり、イベントスペースだったりと変わっていってますよね。

はい、最初にゲストハウスを作るときに、地域に何か還元できることをしようとスタッフたちと話し合ったんですね。ゲストハウスって昼間は空いているから、居間の部分を使って、子育て中のお母さんたちでも働ける雇用の場と居場所づくりをやってみようと思って、絵本好きなスタッフが集めてくれた絵本を置いて、絵本カフェを始めることにしたんです。

─── 働く人も、利用する人も地元のお母さんたちなんですね。

そうです。子育て中でも働きたいと思っていたり、自分の時間が欲しいと思っていたりしても、なかなか家から出られないママたちが多いということを知って。そういう人たちに子連れで出勤してもらったり、カフェを運営しながらイベントも開催するという場を作りました。応募を出したらたくさんの人が来てくれて。みんな週1くらいしか入れないし、月給にするとすごく少なかったと思うのですが、自分を生かして働きたい、外に出たいっていう思いで来てくれていました。

お客さんも結構入って、狭い場所だったので、いつも子どもたちとママで溢れかえっていましたね。

─── 育児中に出かける場所や、働ける場所が必要とされていたんですね。

あるお母さんが、男の子の手を引いて、もう髪も乱れてメガネも曇ってという感じで、「新聞の応募を見ました」と来てくれたんです。声もすごく小さくて。その人を見た時、とにかく心配になって、なんとか助けになりたいと思ったんですね。

その方は、働いてお客さんと知り合いになったり、ママ友が増えたりしていくうちに、どんどん輝いてキレイになっていったんです。その変化を見て、すごく嬉しかった。

あ、私がしたいことってこういうことだって、思い出したんです。

─── 「こういうこと」というのは?

看護師時代、小児医療センターで働いていたんですが、そのとき付き添いのお母さんたちの変化がすごく心に残っていて。例えばお子さんが回復していくと、お母さんたちはとても嬉しそうで笑顔も増えてキラキラしていきます。でも反対に、例えばなかなか治らない病気のお子さんの看病をされているお母さんは、だんだん元気がなくなって、お化粧もしなくなって、というふうになっていってしまう……。大きな病院の看護師では、お母さんたちを元気づけたくてもできることは限られていて、もどかしい思いをしました。

その頃にも感じていたように、自分は子育て中のお母さんたちに、元気になってもらいたいんだという原点を思い出したんですね。それでカフェやイベントをして、その思いを実現していったんだと思います。

─── 2019年には、子育てシェアスペースOmusubiを開設されていますね。

気仙沼も少しずつ、子連れで出かけたり、働いたりする場所はできてきたんですが、まだ小さい子を持っているお母さんが子どもを預けられる場所がないという声を聞いて。ちょっと預けて歯医者に行ったり、行き詰まったときに一人になってホッとしたり、そんな場所が必要なんだなと思ったんです。

それで、元々「架け橋」のお客さんで保育士だった方と一緒に、一時預かりの託児所を立ち上げることにしました。「架け橋」とは別の空き家を利用して、若い女の子たち専用のシェアハウスを作り、そこに、託児と、ママのゆっくりできる場所を作ったという形です。シェアハウスに住んでくれている若い子たちも、近くで子どもたちがいる状態が当たり前になったら、その後子育てにも入りやすかったりするのかなという考えもありました。

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