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縁あって来た福島。続く転入女性たちにも、福島を好きになってほしい

藤本菜月

一般社団法人tenten 代表
福島

自分たちだからできる、転入女性がいきいきできる「究極のお節介」

─── どんなことを思い出したんですか?

南会津に行ったばかりで沈んでいた頃、同じ団地の奥さんたちがずっと家にいるなぁと思ってたんです。私もそうでしたが、みんな何やってるんだろうって不思議でした。

かたや、世の中では労働人口減少とか、女性活躍とかって言われてるのに、いわゆる転勤でついてきた私たちはその土俵にすら乗れない……その時の気持ちを思い出しました。そういうこともっと知られた方がいいんじゃないか、それに対して何かできないかっていうことを、改めて考えるようになったんですよね。

友達でもパートナーの転勤で働きたいのに働けないという人たちがいて、勿体ないじゃないですか。働いていないことで家族の中で立場が弱くなったり、パートナーと対等でいられなかったり、そういうのって悔しくないですか? 自分でいくらかでも働いて稼ぐっていう自信とか、すごく大切だなって。

今、活動をしていて、女性って、子育てとか介護とか色々な理由で定職に就けない人が多いということも分かってきて……特に転入してきた方は、頼れる人が近くにいないことが多いから、無理のない働き方や多様な働き方が必要だなって改めて感じているんです。

─── 菜月さんはやはり、仕事をすること、仕事づくりに情熱があるんですね。

そうなんですよね。私には、胸を張って仕事をしています、って言いたいところがあるんでしょうね。そうはいってもいきなり仕事づくりができるわけもなく、まずは、転入女性のサポートをしている人たちがどんなことしているのか調べてみました。

郡山市の公民館では転入女性向け講座がもう20年近く続いていて、料理や歴史、観光など8回コース。ああ、こういうのいいなあ、私もあったら絶対参加したなあって思いましたね。それと、いわき市には「いわき転入女性の会」があって、毎月の定例会でおしゃべりをしていると知りました。高校生たちを見習って、思い切って連絡して会いに行き、どんな風にやっているのかお話を聞かせてもらいました。

それで、この2つの活動を参考に、福島市でのwelcomeワークショップと、tentenカフェという座談会を柱にした事業を計画しました。BFFの代表の伴場さんがとても背中を押してくれて、助成金申請の相談にも乗ってくれました。色々アドバイスをもらえたおかげで見事に通って。

写真:本人提供

─── そうなんですね。でも、助成金申請って、団体としてということですか?

それが、実は任意団体bel*fonteでやったんです。南会津で始めた雑貨づくりの団体を細々と続けていたんですよ。雑貨を作るのは、私の転勤族の友達でやってみたい人がいたら作るのを頼んだり。女性の内職みたいなことになってたので、あ、これは転入女性サポートの事業にもつなげられる! と。南会津の人たちも、どうぞどうぞという感じで。

─── またまた、つながりましたねえ!

そうなんですよ! ここまで歩んできた点と点がようやくつながり始めました。いわき転入女性の会で紹介してもらった女性が団体に加わってくれたおかげもあって、ワークショップやtentenカフェの参加者のコミュニティが育ってきています。

参加者は、自分の状況を変えたいっていう方々が多くて、すごく前向き。そして、いろんなところを転々としている人たちって、特技や経験をたくさん持っているんです。

このコミュニティ内で小さいお仕事紹介みたいなことを続けてきたんですが、事業として仕事の仲介に取り組みたいなと思ったり、行政からの移住者定住支援の委託事業にもチャレンジすることになって。だから思い切って、団体の名前もbel*fonteからtentenに変えて法人にしたんです。bel*fonteが転入女性サポートのtentenの一事業になったという(笑)。

写真:本人提供

─── なるほどー! 昨年、福島市内に県産品を販売するギフトショップ「ent」もできたんですよね。

ありがたい展開に自分でも驚いています。場所があるっていうことが、新しい可能性を広げてくれる。今までだとイベント参加しかアクセス方法がなかった人が、訪ねてくることができるんですよね。

たとえ転勤で2年、3年しかいなくても、去るときに「ああ、福島好きだったな、また来たいな」って思ってほしいじゃないですか。今暮らしているところを好きになるって、そこにいる時間の長さじゃないなって最近思うんです。私が、古民家のご夫妻との出会いで南会津を好きになれたように、誰かとの出会いが好きへの時間をぐっと縮める。そのことに気がついて、究極のお節介だけれど誰もやらないなら私たちがやろうって。

法人にしてからやっと、あ、これが私の仕事だ、って思えるようになりました。福島に来て15年。ようやくこの地に根を張って、いろんな点がつながったからこそ、こんな事ができるようになったんだなんだなあ、と感じています。

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藤本菜月
1980年石川県小松市生まれ、福島県福島市在住。名古屋大学農学部の果樹園芸学ゼミで桃の葉について研究。卒業後、農林水産省で4年9か月勤務し、農業改良資金、経営構造改善事業、農地法関連業務、国際協力業務等に携わる。結婚を機に退職し、福島県職員のパートナーの赴任地を転々とする。これまで福島県内4か所(南会津町、喜多方市、須賀川市、福島市)で生活。この経験をもとに、転入女性サポートの活動を立ち上げる。2020年10月に一般社団法人tentenとして法人化、仲間や地域とつながるキッカケ作り、仕事作り、暮らしの情報発信などの事業を行う。2021年には福島市内に県産品のギフトショップentを開店。2児の母親。趣味は書道、刻字。

一般社団法人tenten https://tentent.info/
福島に移住・転入した女性が、福島の暮らしの情報を発信するサイト tenten fukushima https://tenten-f.info/

取材・文 塩本美紀
写真 加藤美由貴
取材日 2022年2月14日

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