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いつか、石巻からオリンピック選手を。食×スポーツで応援したい
小川奈津美
季節のおいしい食卓 SONO店主
宮城 石巻
支援しに来たのに、支援されてる。派遣切りから飛び込んだ被災地での思い
─── 石巻にお惣菜屋さんをオープンしたのが、2020年の5月だったんだそうですね。
そうです。とても長い時間かけて準備してきたんですが、まさかのコロナで、オープン日の5月13日は緊急事態宣言真っ只中でした。自分で作ることが好きだし、食べてもらうことも好き。飲食に関わるお店をやりたいとずーっと思っていて、いろいろ考えて始めたのはテイクアウトのお惣菜屋さんです。テイクアウトにしたのはコロナとは関係なく、家族や友人や、大事な人と一緒に食べる食卓、日々の食事の時間を大事にしてほしいっていう思いから。もちろん一人で食べる人もいるし、お店で食べるごはんもいいけれど、自分は祖父母と一緒に住んでいたので夕飯は7〜8人で食べていたんですよね。
─── きっと、家での温かい食卓のイメージがあるんですね。
とはいえ、ここは近くにマンション型の復興住宅があって住んでいる方は年配の方が多く、一人分作るのもねえっていう感じで寄ってくださる方も多いです。今はだいたい、1日3〜4種類お惣菜作っているんですが、石巻って農家さんも多くて、新鮮で美味しいお野菜がいっぱいある。毎日バラエティが出るように色々な種類の野菜を入れるようにしています。あと、実はいちご大福が看板メニューになりつつあります、お惣菜屋さんなんだけど、スイーツが人気(笑)。あんこも自作で、今まで食べた中で一番美味しいと感じた小豆を使っています。北海道の農家さんから仕入れているんですよ。
─── 奈津美さんは静岡出身で、震災後の復興支援でこちらに来たんですね?
はい。震災当日はメーカーの派遣社員として神奈川のオフィスビルにいて、まさか東北があんなことになっているなんて気づかずにいました。そのあと毎日テレビで様子を見て気になって何かしたいって思っていたときに、震災の影響でなんと4月頭に派遣切りにあったんです。その有休消化期間中に知人から被災地の現状を視察をしてきてくれないかという話があって東北に行ったところ、縁のできたボランティア団体でアメリカ人スタッフと地元の人の間に入る現地スタッフとして働かないかということになりました。5月にはもう、岩手県住田町のボランティア拠点でテント暮らしをしていました。
─── すごいタイミングでしたね。テント暮らしはどのくらい続いたんですか?
2011年の11月末までです。そのボランティア団体が、宮城県の気仙沼で大きな倉庫を改装して拠点を作ったのでそちらに移りました。
気仙沼拠点の1階には大きなキッチンと食堂があって、お宅の片付けを手伝った近所の人たちが遊びに来てくれたりしていたんです。「ここに来るとほっとするんだよね」って語る地元のおじいちゃんおばあちゃんと、たわいもない話をしたりして、それが心地よかった。孫のように可愛がってもらいました。支援しに来たのに、支援されてる(笑)。