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リアルな経験を活かす。離婚・再婚・出産を経て、描き直したライフストーリー
竹下小百合
夫婦・パートナー問題専門カウンセラー/ミライフ(株)代表
宮城 仙台
自分のルーツを探しに――遺書を書いて挑んだ旅
─── 「グラスルーツ・アカデミー東北」で大きな気づきがあって、翌年2017年にはシアトルでの研修にも参加されたんですよね。
ちょうど長男が小学校に入る前の年でしたね。だけど、息子を預けて一人で渡米することについてはすごく悩みました。息子と7泊8日も離れたことなんて一度もなかったですし、まだ保育園児でしたから……。
当時、アメリカの大統領がトランプ氏に変わったばかりで、クーデター未遂事件なども起きていていたので、そんな時に飛行機に乗って一人で海外に行って、もし自分に何かあったら、息子は一人になってしまうと思って。もしものためと、飛行機が落ちた時用に、遺書も書きました。
─── 遺書を! それくらいの覚悟で参加されたんですね。
元夫にも「何かあったら、その時は息子をお願いします」と伝えましたね。
そこまでしてでも行きたかったのは、やっぱり「もっと自分を深く掘り下げてみたい」と強く願ったからです。
離婚をして一人で息子を育てて数年経っていました。カウンセリングだけでなく、いくつも仕事を掛け持ちしながら毎日精一杯で。なんとか現状を変えたかったけど、自分の深いところを見つめ直して修正する時間なんてなかなか取れませんでした。
だからこそ思い切って海外に出て非日常の場所に行ってみたいと思ったんです。そこまでしないと、自分自身と向き合う時間は生み出せないんじゃないかって。
─── 実際に研修を受けてみて、求めていた変化はありましたか?
研修では自分のルーツを掘り下げて、これまでの人生を絵で表現するワークをしました。最初は、「絵も苦手だし、人生を表すって何 !?」なんて戸惑っていたものの、リラックスできる広い部屋で、時間をかけて好きなように描いていくうちに、だんだん、これまでに抱えていたいろんな思いが見えてきたんです。
その時に、元夫に対して抱いていた強い怒りの感情にも、変化がありました。
─── へぇ! 例えばどんなものですか?
離婚は孤独な作業で、辛かったし、傷つきもしたけど、最終的に自分で決められたことはよかったって思えたんですよね。大変な経験を乗り越えられたし、離婚は必要だった。今は、大好きな息子が元気でそばにいてくれるのだし、この大好きな息子に出会えたのも、元夫がいたおかげだったんだって思えたんです。
─── 離婚も、それまでの出会いも、肯定できたんですね。
もっと言えば自分自身のことも、見つめ直すことができました。
例えば幼い頃、私の目が斜視だったことから、両親は様々な眼科医に私を連れて行ってくれました。2つ違いの弟もいたし、大変だったろうな……とか。小学生の時に自分の体にコンプレックスを感じていたことを思いながら、川の激流に浮いている自分や、山の中に一人で佇む幼い自分の絵を描いていきました。これまでのことを振り返り、絵を描きながら、「私、頑張ってやってきたんだね」って自分を褒めてあげたくなったんです。自己肯定感が低く、自分を褒めるのが苦手だったけど、「よくやったね」って思えるようになったのはすごく大きな変化でしたね。