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ドン底から救ってくれた海との暮らしは、私らしく進む道を照らしてくれる

三浦尚子

ワカメ生産者/ライフスタイルブランド「ura」
岩手 陸前高田

ここからがスタート。挑戦し続けられるのは、支えてくれる人たちがいるから

─── すごい行動力ですね! 高田へ戻ってきて「また働きたい」と千田さんへ話した時、どのような反応でしたか?

快く受け入れてくれました。来るもの拒まずという感じでしたね。ただ、その当時、千田家のお母さんが体調を崩していて、大変な時期だったのにも関わらず、私のことも見てくれていたので、申し訳なかったなという気持ちがあります。自分にできることがしたいなと思って、何ができるか考えた時に、お仕事で還元していくことくらいしかないなと思いました。最初の頃は、何かができるというほど、できるわけではなくて。分からないことをずっとやっていた感じでしたね。全然役に立っていなかっただろうなと思います。
お世話になっている分、仕事でできることで、返していけたらいいなと思っています。

─── 何も分からない状態から飛び込んで、今では独立をされてご自分でワカメの養殖をされているんですよね?

はい。2020年から、ワカメの生産者として独立はしましたが、来た当初と同じ感じです。作業自体は分かったけど、今まで携わってなかったことも全部やらないといけないので、何から何まで面倒を見てもらわないとできないんです。
分かってなかったことが多すぎて、色んなところでサポートしてもらっています。

ここからですよね。ここから、少しずつ自分でできることを増やして、一人で一連のことができるようになった時に、恩返しになるのかもしれないですね。千田さんの負担が減らせるように、ちゃんと手から離れて、私は私にできる形を整えていかないとと思っています。

その形が整った時に、もしかしたらだんだん移住者の人が増えて、漁業に興味がある人や、やってみたいという人が、始めやすくなるかもしれないですし。

写真:吉田ルミ子

─── 尚子さんのことを見て、知って、自分も漁業に携わってみたいと思ってくれる人が増えると嬉しいですね。

そうですね! よそ者だからとか女性だからできないというわけではないです。やる気があればできると思います。やり方次第だなと思いますね。地元で後継者として迷っている人も「アイツがやっているなら、自分もやれるんじゃないか」って思う人もいるかもしれないですし。今までの価値観や形を受け継ぎつつ、自分でできることを新たに作っていけたら、もっと柔軟になっていくんじゃないかなって思いますね。

─── 漁業を始めるのはハードルが高い印象でしたが、尚子さんのお話を聞いていると、やる気があれば高いハードルも超えられるのだなと感じました

今は高いハードルかもしれませんが、これから色んなハードルが少しずつ下がっていったらいいよなと思います。養殖も漁業の仕事も技術だから、すぐに身につくものではないですが……。私みたいに、移住してきて漁業をゼロから始めた人たちを見ていると、やる気に満ち溢れているんですよね。私も頑張らないと、と刺激を受けることも多いです。でも、急ぎすぎるのは良くないなと思っているので、私は私のペースで進めていきたいと思っています。

─── 現在はワカメ養殖の他に、ご自身で商品開発をした製品の販売もしているんですよね?

そうです。ライフスタイルブランド「ura」を立ち上げて、一次産業で使われない部分を利用した商品を作っています。ワカメの捨てる部分の茎からエキスを抽出して、化粧品会社さんの協力のもと、シャンプーやコンディショナーを作りました。

できれば、視点を変えて、今までは捨てていたものを原料にして、生活用品や自分の暮らしにまつわるものをこれからもっと商品化できたらいいなと思っています。

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