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第一に家族を愛すること、そして夢を追うこと。故郷がそれを叶えてくれた
横須賀直生
おかしなお菓子屋さんLiebe
福島 楢葉
頑固さと、失敗を恐れないこと
─── お店は今も直生さん一人でやってるんですか?
その予定だったんですが、開店から1年経たないうちに従業員を雇うことになりました。私より10歳ほど年下の女性です。楢葉出身で、パティシエとしては3年のキャリアがある子です。お店のSNSに「是非ここで働かせてください」とダイレクトメッセージをくれたんです。人を雇うということは毎月彼女のお給料分は絶対に稼げなきゃいけないということです。私にとっては大きなチャレンジでしたが、「これをバネに売り上げを伸ばせばいい」と腹を決めました。女性パティシエって実は数が少なくて、奮闘している彼女の姿が昔の自分と重なったんだと思います。使命感みたいなものが湧いてきましたね。
─── 直生さんが今後やりたいことを教えてください。
これからは夫の念願だったカフェをお店の隣に作ります。楢葉のお土産となるようなお菓子を作ったり、通販もやっていきたいです。それから、「おかしなお菓子屋さん」らしく“おかしな”こともしたいです。今考えていることは2つあって、1つは楢葉の不登校の子たちを雇用することです。こちらに来て小学生の子どもたちと関わる機会が増えたんですが、学校に馴染めない子たちのケアが地域でちゃんとできてるのかな? と疑問に感じることがあって。「学校だけが居場所じゃないよ、違う場所に行ったら仲間がいるよ、自信がつくよ」っていうことを伝えたいですね。2つ目は子育て中のママたちに非現実的な空間を提供することです。双葉郡は娯楽が少ないので、子育てや家事に追われる日々をちょっと忘れられるような時間を作りたいなと思っています。楢葉のママさんたちは町外出身者が多いんです。茨城にいた私のようにこの町に嫁入りして来た人たちですね。知らない土地で頼る人もいなくて不安になっているママさんたちが気軽に来られるような場所を作りたい。過去の私を救ってるみたいですね。
─── 直生さんの夢を叶える力って……なんなんでしょうね?
そうですね……。確かに、振り返った時には叶えていることが多いかもしれません。でも悩むことはみんなと同じですよ。今だってカフェを開くためのお金のことで悩んでいます。自分にどんな力があったから夢を叶えてこられたかというと……。35歳になってようやく自分自身のことがわかってきたんですが、頑固さと、それから失敗を恐れないということかもしれません。私には夫の存在が大きくて、失敗しても借金してもアキちゃんさえいてくれたらいいと思ってるんです。だからやってみよう精神でいられるのかな。
- 横須賀直生
- 1998年生まれ、福島県楢葉町出身。楢葉町の洋菓子店「おかしなお菓子屋さん Liebe(リーベ)」店主。製菓専門学校を卒業後、神奈川県の洋菓子店で4年間修行。1年間のドイツ旅を経てパティシエの夫と結婚。夫の地元である茨城県水戸市のホテルでパティシエとして勤務しながら、28歳で第一子を出産、翌年第二子を出産。家族と過ごす時間を大切にしながらパティシエの仕事を続けるため、起業を目指して2019年楢葉町にUターン。2020年にLiebeを開店、第三子を出産。
おかしなお菓子屋さんLiebe https://naonookashiyasan.com/
インスタグラム@ nao.yokosuka
インタビュー日:2022年9月28日
取材・写真 鎌田千瑛美
構成・文 成影沙紀
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