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子どもたちが本来持つ「生きる力」が発揮される環境を作り続けていきたい

高浜菜奈子

つちのこ保育園園長
岩手 普代村

認可外保育園として、森のようちえんを立ち上げる

─── 森のようちえんを知ったきっかけは何だったんですか?

多分2014年ぐらいかな。地球のしごと大學教養学部のカリキュラムをつくる中で調べているうちに知りました。持続可能な社会のなかに子育てというカテゴリーがあって。持続可能な社会をつくる保育って何だろうって考えたときに、自然のなかで子ども自身の育ちを見守る「森のようちえん」というものに出会って、これだ、と講座の内容に組み込みました。それが、いよいよ自分事になってきたんですね。

上の娘が生まれた頃、夫が地球のしごと大學の仕事と並行して、岩手県田野畑村の地域おこし協力隊に着任することになったんです。家族で田野畑村に移住して、海も山もある大自然の中で子どもを育てられるとワクワクしていたんですが、町の保育施設以外に選択肢がなかったことから、自分たちで森のようちえんをつくろうという発想になりました。この頃は、保育士の方に現場をお願いして、自分は保護者として運営を手伝いながら経営の方をやる、みたいなイメージでした。そういう絵を描いて、賛同してくれる人が来てくれたらいいなあって、親子で森のおさんぽイベントを開催したり、映画の鑑賞会をしたりしながら仲間を探していました。役場をはじめ村内の子育てや教育に関わる人たちに話をしに行ったり、全国の自然保育の現場を訪ね歩いて学んでいたんですが、なかなか村の中に安定して使えるいい場所を見つけられなかったんです。そんな中で2人目を妊娠して。

─── そうでした。その頃、私たちも田野畑村に菜奈子さんを訪ねて行きましたよね。

そうです、どうしたら立ち上げられるかって模索していましたよね。他県にある私が尊敬している先生の森のようちえんを見学に行ったらやっぱり素晴らしくて、もう私だけ子どもたちを連れて単身移住してしまおうかというくらい追い込まれていました。すると、上の娘も成長してきて次の春には3歳で年少さんになるという2020年12月頃、これはいよいよ困った、というときに知人から隣の普代村にこういう古民家物件がありますよっていう話をもらって。ちょっと行ってみたら、裏には森もついていたんです。家の前にはちょっとした空きスペースと、道路を挟んで向かい側に畑があって。この家で暮らしながら、森のようちえんをやってもいいですか? っていう話がどんどん進んで、もう本当に、4〜5か月ぐらいでバタバタ準備しました。

─── 場所っていう大事なピースがハマったんですね。

4月の最初は子どもは3人、田野畑村で一緒に活動してきたママ友と一緒に自主保育から始めました。そこから隣の野田村に住んでいる保育士さんが加わってくれることになったので、その時点で認可外保育園として届け出をしたんですよ。

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