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ドン底から救ってくれた海との暮らしは、私らしく進む道を照らしてくれる
三浦尚子
ワカメ生産者/ライフスタイルブランド「ura」
岩手 陸前高田
海に恋して8年。飛び込んだら見えてきた新しい景色
─── 神奈川県出身の尚子さんが、陸前高田へ来た最初のきっかけは何でしたか?
大学生のころ所属していたゼミで、震災の傾聴ボランティアとして行ったのが最初です。当時は、仮設住宅に住む人たちからお話を聞いたり、地元の人たちの当時の様子や、高田がどういった所だったかを聞いて、文章におこす活動をしていました。その時知り合った自治会長さんが、今の職場でお世話になっている「マルテン水産」の代表、千田勝治さんです。
─── 千田さんとの出会いが、陸前高田へ移住する決め手になったんですか?
結果そういうことになりますね。
大学生の頃は、やりたいことがたくさんあって。関西にいる友だちと一緒に、京都の限界集落に月1で通っていました。地域の人の畑を借りて、農作業をさせてもらったりして、ローカル体験をしていました。他には、編集関係のインターンもしましたね。
周りが就職活動をしている友だちが多いなか、私はちょっと違うなと思っていて。今思うと、嫌な学生だったと思います。卒業後の職も決まっていない、家庭の事情とかもあって、色々悩んでいた時期でした。まさにドン底でしたね。そんな私を見て、ゼミの先生が「千田さんのお家で、ワカメの収穫作業があるけど、人手が足らないみたいだから三浦さん行ってみたら?」と声をかけてくれました。
─── ワカメ作業のお手伝いと聞いて、率直にどう思いましたか?
ボランティアで来ていた時は、漁業と関わることがなかったですが、身近じゃなさすぎたので、何のイメージも持ってなかったかもしれないです。どういうことをするかも全く分からない状態で、まず行ってみよう! という感じでしたね。知っている人たちだったので、大丈夫だろうという安心感はありましたけど。でも、今だったら行かないかもしれません。ドン底の時だから、行動できたのかなと思います。よく考えるとすごいですよね。
─── 全く違う世界に飛び込むのは勇気がいると思います。1か月作業を手伝ってみて、何か感じるものがあったんですか?
ワカメの収穫時期って、大体1か月半~2か月の期間で行うんです。作業内容はハードでしたが、その大半を一緒に作業して、一連の色んなことを全部見て、やり切った気持ちになりました。それに、一緒に働く人との時間もとても有意義でした。ご飯を食べたり、おしゃべりをしたり、お風呂まで貸してもらって。そういう時間が自分の中で思い出深かったです。
帰りの新幹線のなかで、寂しくなって、帰りたくないなって思いましたね。
─── 尚子さんにとって、とても貴重な1か月間だったんですね
そうですね。この1か月間、ずっと海の近くで働いていたので、海が見えないところへ戻っていく寂しさがありました。もうちょっとやりたいな。もう少し色んなことを見たいなという気持ちが込み上げてきました。戻っていく感じがとにかく寂しかったんです。それだけは、今でもすごく覚えています。でも、また一週間後に高田にきました(笑)。それから、8年が経ちます。