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コミュニティナース、畑へ。看護師人生で今が一番たのしい

星 真土香

コミュニティナース / HATARAKU〜畑多楽〜
岩手 紫波

やりたいことがつながった。コミュニティナースへの道

───  その後はどうされたんですか?

在宅医療のお仕事に就きました。印象的だったのは、看取りを経験した時。人生の最期を迎えた時の表情が穏やかに見えたんです。
何でだろう? と考えた時に、「どう死にたいか?」ではなく「どう生きたいか?」を考えながら皆さん生きていて。私も一緒になって考えました。結果として、自分らしい人生の最期を迎えることにつながっていたのかなと思います。

また、家族や親しい人とのつながり、住み慣れた自宅が、人を元気にして健康をつくっていることにも気付きました。今までは病気になってからの人に関わってきましたが、これからは病気になる前の人に関わって、人のつながりで健康を培いながら「どう生きるか?」を一緒に考えていきたいなぁって。
そんな時にコミュニティナースの存在を知り、まさに私がやりたいことだ! と、さっそく養成講座を受講しました。

─── 今の勤め先である紫波町とはどんな経緯でつながったんですか?

健康的なまちづくりに関わるご縁をいただきました。もともと、自分の出身地である岩手で何か実践してみたいと思っていたので、2020年2月に地域おこし協力隊の制度を利用し、コミュニティナースとして紫波町にやってきました。
私のような何をやるか分からない人を、紫波町の方々は柔軟に受け入れてくれて。「とりあえず、まずやってみな!」って言ってくれたのがとてもありがたかったですね。

── いいタイミングで、いい環境と巡り会えたんですね。地域おこし協力隊に着任されてからはどのような活動をしていったんでしょうか。

着任とほぼ同時にコロナの流行が始まり、地域全体が自粛ムードで、これは孤立を生んでしまうなぁと。一方で感染対策を教えて欲しいというニーズもあったので、役場ではなく町のカフェ内に“暮らしの保健室”を設けました。

すると、相談に来る皆さんがそこを居場所のように使ってくれたんです。ただ本を読んだり、来る人たち同士でおしゃべりしたり、将棋をしたり。もはや健康相談が目的ではなく(笑)。
でも会話の延長線上で、昨日病院の先生にほめられた! とか、最近便秘気味なんだよね、とか、健康相談をしてくれるようになって。続けているうちに、「公民館でもやってもらえませんか?」と言われたので、公民館でも暮らしの保健室をやることになりました。

─── その暮らしの保健室を、畑でもやっているんですよね。

そうなんです。もともと私の実家が農家なこともあって、畑が好きで。岩手に帰ったら絶対畑やりたい! って思ってた時に、紫波町で体験農園が開催されていることを知って参加したんです。70代の男性たち3人で体験農園を運営されてたんですけど、おせっかいにも私がお手伝いをし始めたところがスタートでした。

そのうち畑で芋煮会やお茶会を企画して、健康相談も出来たら面白そうかな、と軽い気持ちでスタートしたら、コロナ禍にも関わらずみんな集まってくれて。これはいい! 畑は孤立を防げるぞ! って。じゃあ畑にビニールハウスを建てて、保健室にしちゃおう! ということで、昨年秋に畑の保健室が誕生しました。

ただ、参加者の人数が運営スタッフに対して予想以上に多く、運営側がバタバタするようになって。そこで一度課題を整理し、今年からは目的と内容を改めて「畑多楽縁(はたらくえん)」というコミュニティ畑として開催しています。毎週木曜日にみんなで畑作業をしたり、お茶っこ飲みをしたり、自由に過ごせる場所です。
ビニール以外は全部いただきもの。定年退職した男性たちが時間があるからっていうので手伝いに来てくれて。ビニールハウスは正直、少しいびつな形。へこんでるところがあるんです(笑)。でもそれが手作り感があっていいかなって。

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