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同じことを繰り返したくない。仕事に活動に邁進してきた源にある気持ち
菅波香織
未来会議 事務局長/はまどおり大学 代表 弁護士
福島 いわき
もう誰にもこんな経験をしてほしくない
─── 香織さんの仕事、活動の源泉ってなんなのでしょうか。
同じことを繰り返したくない。同じことを繰り返しそうなのが目に見える。終わっていない感じが強い……そんなところでしょうか。私自身、子どもの頃に何度か性被害に遭って、大人にモノみたいに扱われる経験をしました。いじめにも遭いました。目の前のことに一生懸命取り組むことでしか自分を癒せなくて、ハタチすぎまで自分を大事にできませんでした。
司法試験の勉強をして人権を学んでようやく、「あのとき、悪いのは私じゃなかったんだ」と思えたぐらい。その後、DVを受けたこともあったし、子どもには虐待的な関わりをしてしまったこともある。だから私、被害者になった経験も加害者になった経験もあるんです。自分が被害者になったときは自分が大事な存在だと思えなかった。だから助けてとも言えなかった。一方でそんな自分も加害者になってしまったことで、誰もが加害者にも被害者にもなりうるのだと知りました。
幼い頃から、毎日自分が自分として生きていることの気持ち悪さみたいなものがありました。眠って次の日起きたら、どこか国の売られた子どもとして目覚めるんじゃないか、という不安が強くて。追いかけられたり、逃げられなかったり、辛い夢を見ることも多かったですね。そんな経験を繰り返しているうちに私の中で“被害者であること”が固定されてしまったのかもしれません。さまざまな報道で目に触れるいろんな被害者がみんな“私”で、その感覚がとてもリアルなので、もう誰にもそういう経験をしてほしくないと強く思います。
─── 香織さんが誰かを救う活動に専念して、自分の幸せが蔑ろになってないかなって心配です。
自分の幸せを後回しにしているわけでもないですよ。「私、基本的に幸せだな」って思えるようになってきました。ベリーダンスを習ってるんですが、踊っている時はめちゃめちゃ幸せを感じられますね。家では子どもたちに馬鹿にされて大変です(笑)。「ママ本当に東大行ったの? 頭悪いよね〜」とか言われて。いろいろと馬鹿なことをやって失笑を買っているので。お酒飲んだらもっと酷いです。酔っ払ってお風呂で寝ちゃったり。でもそれでいっかなって自分を許してます。親にも自由な時間があって、ちゃんとしていないときがあっていいんだよということが子どもたちに伝わって、いつか体現してくれたらいいなと思います。
- 菅波香織
- 1976年いわき市生まれ。いわき法律事務所弁護士、未来会議事務局長、はまどおり大学代表。東京大学工学部卒業、香料会社で研究員として勤務。次女出産後、家事や育児に関する男女の不平等を痛感して弁護士の道へ。2007年に地元にUターンし、離婚問題、子どもの虐待、いじめについて多く相談を受けている。22歳、21歳、19歳、13歳、11歳の5人の子を持つ母。
未来会議 http://miraikaigi.org/
はまどおり大学 https://hamadori-daigaku.com/
インタビュー日:2022年10月30日
取材・写真 鎌田千瑛美
構成・文 成影沙紀
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