070

同じことを繰り返したくない。仕事に活動に邁進してきた源にある気持ち

菅波香織

未来会議 事務局長/はまどおり大学 代表 弁護士
福島 いわき

“困った子”ではなく“困っている子”

─── 「はまどおり大学」について教えてください。

子どもの居場所や虐待問題、発達障がい、性教育など、子どもの話題に特化してみんなで考えようという取り組みです。

虐待問題は私にとってずっと重要なテーマでした。昔、子どもたちに虐待的な関わりをしてしまったことがありました。15年以上前になりますが、遅刻厳禁の司法研修所に片道2時間以上かけて通っていたころ、決められた時間に3人の子どもを保育園に連れていかなければならなくて、子どもたちに怒鳴ったりときには叩いたりして保育園に連れて行っていました。

これではダメだとコーチングや子育てについて学び、私の関わり方は少しずつ変わってきたのですが、私自身が当事者だったからこそ、虐待をしてしまう親の気持ちもわかるし、環境がそうさせてしまっている部分があるのも理解できます。子育て中の親御さんが少し息抜きできたり、子どもへの関わり方を学べる場を作ったりしながら、毎日しんどさを感じている子どもを一人でも減らしたいと思っています。

子どもの発達障がいについては、末っ子の子育てがきっかけで事業を始めました。末の娘が発達障がいグレーゾーンで、小学校の入学式から学校に行くことができなかったんです。どう対応すればいいのか必死に学んでいく中で、発達に特性がある子や障がい児を育てる親の大変さを身をもって体験しました。子どもたちへの支援はもちろんですが、親への支援も絶対に必要だなと。WISK検査*を受けると、娘は文字を読むのが苦手だということがわかりました。検査の結果を知らされた担任の先生が、テストの時にうちの子だけ口頭で問題文を読んでくれたんです。そうしたらいつも0点だったのが100点をとってきて。先生が変容してくれたおかげで娘の困りごとが減った。障がいそのものが困難なのではなく、社会環境が障がいに伴う困難さを生んでいるんですね。

はまどおり大学ではそんな見えにくい障がいについての勉強会を開いています。この勉強会には当事者だけではなく、親、学校の先生など広く地域の人に参加してもらえるようにしています。障がいの特性や背景を知ると、“困った子”という捉え方が“困っている子”に変わっていく。

今、娘は不登校気味で半分ぐらいしか学校に行っていませんが、学校に行けない子どもたちの学習権をどう保障するかも考えなければなりません。はまどおり大学では一人ひとりに合った学び、体験の場をつくることにも注力しています。

*WISK検査とは「言語理解」「知覚推理」「処理速度」「ワーキングメモリー」の4つの指標とIQ(知能指数)を数値化する検査で、その子の「得意な部分と苦手な部分」から「その子にとってより良い支援の手がかりを得る」ことを目的として行うもの。

─── 香織さんは弁護士のお仕事もありますよね。弁護士のお仕事とこうした活動の関係性は?

そうですね。第二、第三の活動によって弁護士という仕事がエンパワーメントされていると思います。例えば、刑事事件への関わり方がすごく変わりました。実は、新受刑者のうちの少なくとも20%以上は知的障がい、精神障がいを持っているというデータがあります*。加害者を法的な目線で見るか、福祉的な目線で見るかでかなり見え方が変わってくるんです。この人の障がいの特性を考えると、こういう環境ではこんな思考パターン、行動パターンに陥ってしまう。だから本人の頑張りだけではなく環境を変えることや周りの方からの理解も必要だな、というように。

*新受刑者とは裁判の確定により,新たに刑務所に入所した受刑者のこと。データは令和2年矯正統計年報による

1 2 3